5 | ナノ

どうも、俺です。教師やめたい症候群、絶賛進行中!

ぷしゅ、とプルタブを引いていつもよりお高いビールを流し込む。なんでいつもより高めかと言うと、本日俺はいつもより頑張り、いつもより結果を残せたからだ。



「伊達くん、どうしたら書き換えてくれるのかな」
「何したって書き換えねぇよ」

面談を初めて早二十分。
一分でも一秒でも早く帰りたい俺としては最早彼の進路調査書がなんであろうがどうでもいい領域に入っていたんだけど、流石にそういうわけにもいかない。

「書き換えないって言うけどさ、こういうのはこっそり思うべきことであってさ、いやもうバレてるけど。なんつーかな、進路調査書には書かずに直接俺に言えばよくない?みたいな、」

何としてでも書き換えさせたかった俺からの言葉に伊達くんが一個しかない目を丸くする。

「そうか…」

そう呟くと、消しゴムを取り、進路調査書を書き換えていく。因みに第一志望は超難関国立大。

「へー伊達くんここ志望なんだ」
「政宗」
「へ?」
「書き換えてやったから、まずは俺のこと、下の名前で呼んでくれよせんせ」

彼の提案に自分の唇が引き攣るのがわかる。

「確かに、告白なんてせんせ以外にしたって意味ないからな。だからせんせ、まずは俺の名前呼ぶとこから始めようぜ。」

一体何がだからなのか、これは軽く脅迫じゃないのかとか、あ、やべなんか胃痛いんすけど、とか色々考えたけど、どうも彼の鋭い目つきには逆らえない。

「あ…そうね、政宗」



ビールを飲み干し、煙草に火をつける。

「結果も残せたけど、心にも傷を残したな…」

殺風景な部屋に俺の独り言が響いた。


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