痴れ言 | ナノ

狭い布団に男二人で寝ころべば、自然と顔が近くなるのを幸村は少し恥ずかしく思いながらも決して視線を逸らすことなく濡れ羽色の髪の青年をじい、と見つめた。

「そんなに見つめられたら穴があいちまうぜ。」
「あ、も、申し訳ござらぬ。」

幸村が慌てて目を逸らすと青年は小さくばか、と呟いて、もぞりと布団に潜ってしまった。幸村は困ったように眉を下げ行き場のない手をぼんやり見つめた。

「某は…俺は自信がないのです。」
「……」
「いつだって周りに支えられてばかりで、そのくせ碌な恩返しも出来ず…貴殿とは剰りに違いすぎる…」

見つめていた幸村の手にいつの間にか少しだけ顔を布団から出した青年の冷たい、白い手が触れていた。幸村はどこか縋るように、不安定な心を伝えるようにその手を握った。

「俺とあんたが違わなきゃ、なんも楽しくなんてねぇ。rivalになんてなれねぇ。」

「好敵手にさえ…?」
「そうさ。違うからこそ互いに認め合えるんだ。俺たちが全く一緒なら反発しあうだけだ。きっとこうして手を握ることすら出来ない。」

青年が寂しいだろ?と哀しい声で言えば幸村はまるで青年が消え去ってしまうような感覚に捕らわれ、いっそう強く手を握り、小さな、でもはっきりと言った。

「抱きしめても、良ろしいか?」

青年は目を見開くと優しく目尻を下げ、やはりばか、と言いそっと幸村の胸に顔を寄せた。幸村はようやく安心した顔をしてその滑らかな濡れ羽色の髪を優しく梳きながら眠りについた。



痴れ言
幸村とピロートーク。



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