お前は一生両想いなんざ経験出来ねぇさ、と濡れ羽色の青年は笑った。慶次はそのことをなんとなく理解してはいたので残酷な言葉であるにも関わらず、そうか、やっぱり?と笑って見せた。 「あんたは恋の伝導師かもしれねぇが恋のprofessionalて訳ではない。何故ならお前は誰とも好き合ったことがないからだ。」 慶次の長い髪を弄びながら青年は云う。伸びすぎた髪は栄養が届ききらず触り心地なんぞよくないだろうにと慶次は思う。 「恋に恋するとはよく云ったもんだな。お前の場合少し違う気もするが…」 「俺はねぇ、利とまつ姉ちゃんを見てると幸せなんだ。だから自分が恋をするよりも誰かがあんな風に互いのことを想って幸せになっているのが見たいんだ。」 「て、思いこんでるような感じだな。」 青年がにやんと笑う。慶次はまいったなぁと声をもらし自分より幾分細い体を勢い良く抱きしめた。お前はあいつに似ているよ、と耳元で囁くと青年は次はあいつにこうしてやればいいよ、と窮屈な腕の中で云った。 空言 慶次とピロートーク。 |