まーくん(仮) | ナノ

ローテーブルを挟んで、ぐずぐずっ子と部屋に二人。ちかちゃんまじ恨む。

「あ、のー俺は佐助、ね?聞いてたと思うけど。」

できるだけの笑顔、できるだけの優しい声で話しかけるのに男の子はこっちを見てさらに眉を下げた。名前はまさむね、とか言ってたな。親しみを込めてまーくん(仮)、とでも呼ぶか。

「えっと、まーくん、て呼んでいい?」

首を揺らして肯定の合図。別にかわいいとか思ってない。はず、だ。

「じゃまーくんもう遅いしさ、寝よう。明日のことは明日考えよう。ベッド使って。オヤスミ!」

俺はすくっと立ち上がりちかちゃんとまーくんが飲んだコーヒーカップを洗う。ちらっと男の子を見たら少しベッド前で悩んだ後おずおずと毛布に潜っていった。

(家出とか…若さ故の?若さ故のなんだ、過ちか。家出とか考えたことなかったな、家帰んなかったから。)

洗い物をすませ出しっぱなしだったお酒を冷蔵庫にしまう。バイト疲れに面倒事までプラスされてとてもじゃないけどお酒を呑む気にもならなかった。さて、俺様ももう寝よう。お客さん用の毛布をクローゼットから出して電気を消し、クッションを枕代わりに床に寝ころぶ。フローリングに薄いカーペットじゃ体が痛くないわけじゃないけど、うちに人が来ると大抵こんな感じで雑魚寝になるから慣れている。目を瞑ると外のちょっとした雑音と共になにやらもぞもぞと音が聞こえてくる。寝付けないのか、でもまぁ仕方ないね、と無視を決め込むとぴたりと体温が背中に伝わった。

(え……)

声には出さなかった。てゆうか出なかった。

まーくんが俺の背中にぴったり張り付いている。息を潜めて、なのに隙間がないくらいにくっついてる。せっかくベッド明け渡したっていうのに、これじゃぁ意味ないじゃん。


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