バイト先の居酒屋でくったくたになるまで働いた金曜日の深夜。俺は帰りに寄ったコンビニで購入したお酒を思わず落としそうになった。 「ちかちゃん…」 「よお、遅くに悪いな。」 「それ…隠し子?」 大学の友達であるちかちゃんの腰にはなんでかぐずぐず泣いてる男の子がべったりとくっついていた。 「んなことあるかよ、歳考えろ。」 「で、ですよねぇ」 確かに男の子はどう見ても高校生くらいなわけで。ちかちゃんはこう見えてもまだ20歳だもの。 「ま、取り敢えず冷えるしさ。中入りなよ。」 「悪いな。ほら政宗、行くぞ。」 鍵を開けてると後ろで男の子のぐずる声が大きくなったのがわかる。なになになんなの。男の子なら泣くんじゃないって! 殺風景な俺様の部屋は別段散らかってる訳でもないので適当に座ってもらい、お湯を沸かす。こんな時間にコーヒーでいいかな、と迷ったけれど自分の家にはコーヒーしかないことを思い出し、せめてもとインスタントじゃなくてドリップにしておいた。 「で、なんなの?」 コーヒーを二つ並べる。男の子はちかちゃんの足の間で体育座りをしてる。ちかちゃんはその子のお腹に腕を回して政宗、コーヒー煎れてくれたぞ、だなんて甘やかした口調で言ってる。 「実はよう、こいつ俺が地元にいたころの幼なじみでよ。歳はちぃと離れてるがそりゃぁもうかわいくてかわいくてな、」 「はいはい用件だけ言ってくれる?」 「ん、あぁ、それが今日学校から帰ったらこいつが家の前にいたんだよ。で、話聞いたらどうも家出してきたらしい。」 嫌な予感しかしないので俺様はすかさず先手を打つ。 「面倒事はお断り。」 「ちっ、そう言うなよ。俺だって明日からの合宿がなきゃこんな所には来なかったんだ。」 ちらっと男の子を見ればよくわかってない感じですんと鼻を鳴らしコーヒーを啜っていた。 「てゆうかこんなとことか酷くない?」 「たりめぇだろうが!テメェ男も女も見境無く…」 「そう思うなら連れてこないでよ。ちかちゃん友達多いんだしさ。」 「だから明日からの合宿で大半の奴は一緒だし、幸村に子守は無理だろうし毛利のヤロォなんかに任せたら警察連れてかれるし慶次は折角彼女出来そうなのに子供預けるなんて悪ぃし、高校生でも一応男なんだから女子に預ける訳にはいかねぇだろうがよ。」 ちかちゃんにしたらまともな思考回路じゃない。俺ははぁと溜め息を吐いて申し出を受け入れた。 「預かるっても基本的に放任主義だからね、俺。おとなしくしといてよ。」 男の子にそう言うと小さくこくんと頷いた。 「てめぇ政宗に手出しすんなよ。」 「しないっつーの!俺様年下は範囲外だから。てゆうかそれ迷惑かける人に言う台詞?」 「じゃぁ政宗俺明日早いからもう帰るけどよ、いい子にしてるんだぜ?なんかあったら携帯からかけてこい。」 「聞けよ!」 嵐のように面倒事だけ押しつけてちかちゃんは帰ってしまった。残されたのは俺様と、ぐずぐずしてる男の子。 |