Delphinium | ナノ

子供っていうのは、とてつもなくかわいい生き物らしい。


Delphinium


デスクには大量の資料とパソコン、携帯に電話2台、コーヒーが一杯とかわいい恭弥の写真が並ぶ。

「さぼり過ぎたか。」

今日中に仕上げなきゃならないデスクワークをチェックし、ぼそりと呟く。ここ最近目立った事件も無かったことからついつい恭弥と遊びすぎたようだ。今日は構ってやれないな、と書類を開けたと同時に派手な音を立てて部屋のドアが開いた。

「でぃーのっ!いたっ!」

「恭弥、」

お気に入りの黄色い小鳥とハリネズミのぬいぐるみを小さい腕いっぱいに抱きしめて(扉には体当たりしたみたいだ)恭弥が部屋に入ってきた。

「でぃーの、あそぶー?」

「ごめんな恭弥、今日は駄目なんだ。ボノと遊んでもらってくれ。」

今呼ぶから、と電話を取れば、やっ!という拒否の声。しかし今日ばかりは心を鬼にしなきゃならない。

「恭弥、いいこにしてくれよ。ボノにお馬さん見に連れてってもらいな?」

「やー!でぃーのいなきゃやー」

困ったなぁと思いつつ、自分がいなきゃいや、だなんて言われてしまえば俺だって人間だ。嬉しくないわけがない。

「ふー、仕方ねぇな。」

俺は恭弥の世話を頼んでおいたボノに電話をして小型のテレビを持ってきてもらう。普段外で遊んでばかりの恭弥には子供向け教育番組は新鮮だろう。

「てれびであそぶの?でぃーのも見る?」

「ああ、俺はあっちの椅子で見るから恭弥はこのクッションの上でな?」

恭弥お気に入りの黄色い小鳥の大きなクッションに座らせ、小さなテーブルの上にはお菓子とミルクを乗せてやる。早速テレビをつければ着ぐるみのキャラクター達が映る。

「じゃぁ恭弥俺は向こうで見るな。」

既にテレビに夢中の恭弥はこくんとだけ頷いた。さっきまであんなにやいやいと言っていたのになんだか寂しくて、いやきっと俺が同じ部屋にいるから大人しくしてるんだと言い聞かせて仕事に戻る。
教育番組の音をBGMに俺は再び書類を開けた。

『さぁ!みんなも一緒にー!』

暫くすると軽快な音楽と共に着ぐるみのキャラクターやお姉さん達がちびっこを呼び踊りを始めた。テレビの中の子供達が見よう見まねで踊りだしたのを見て、ちら、と恭弥の様子を伺う。

(クールだなぁ。)

しかし恭弥はじぃっとテレビを見ているだけで踊ろうとはしない。よそ見をしてる場合じゃないと思いつつ、恭弥が踊ってたらさぞかわいいだろうなと考えていたらふと恭弥の異変に気づいた。

(あ…)

さきほど抱きしめていた筈のお気に入りのぬいぐるみが床に置かれている。その代わり自由になった両手はテレビの中のお姉さんの動きを小さな動作で真似ているのだった。

(やべぇ…!かわいすぎる!)

俺が傍にいるから気付かれないようにしてるんだろうが、顔は真剣そのもの、よく見れば足もぱたぱたと動いている。ものすごく映像として納めておきたかったが残念なことにそんなもの用意していない。だから少しでも記憶に残るように出来るだけまばたきをせずに恭弥を見つめておいた。ああ、子供ってなんてかわいいんだ!















「で、恭弥を見てたら仕事が終わらなかったと。」

「うう…ロマ、だってあいつ歌が始まると知らない曲なのに頑張って歌おうと小さく口を開けるし、テレビのお姉さんが質問したらすっげぇ小さい声で『はい。』とか『でぃーの』とか言うんだぜ?そんなのほっぽりだして仕事しろなんて無理だぜ!」

俺の必死の弁解も通用せず、その日すやすやと眠る恭弥の元へは連れていってもらえず一人書斎に詰め込まれたのはまた別の話。


-end-


▼デルフィニウムの花言葉
あなたは幸福をふりまく

→おわりに
@はるさんこの度はご参加ありがとうございました!リクエストのデレデレがすごく楽しそうだったので張り切ってデレデレさせてみました。もしもっとデレデレさせてほしかった…てなことがありましたら本当に遠慮なく仰って下さいね!
@はるさんにはいつもお世話になっております。これからもよろしくお願いします!

こつぶ


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