「せんせの冷蔵庫、なんもないな」 ぱたんと扉を閉めて、その一言。俺はもう、自棄になって昼間からビールだ。 「簡単なもんでいい?」 俺の答えなんて求めてないような伊達はそのまま狭い台所に立ち、何やら調理を始める。 先日俺の好きなブランドで見た、しかし値が値なだけに慎重になろうと購入を見送ったパンツに日本にはまだ上陸していないブランドのTシャツを着て、フリルエプロンを付けるのは一体どんな気持ちなんだろうか。 そんなことを考えながら缶も一本空いたところで伊達が運んできたのは、オムライス。ご丁寧にケチャップでハートをかくというベタな手も使ってくる。俺はハートをスプーンで伸ばし、跡形もなく消した。 「いただきます。」 一口食べたその味は、伊達が作る弁当同様やはり美味い。無言で食べていると、伊達がもう一本ビールを寄越した。 「うまい?」 「うまいよ」 「嫁に欲しいだろ」 「かわいい女の子ならね」 伊達は気にした様子もなく、エプロンかわいいだろ、なんて言ってくるりと一回転する。いやいやそこは落ち込めよ。 「で?何しに来たの?」 「せんせと遊びに」 頭が痛くなる。 「だから、伊達くん、政宗は受験生でしょって!」 「それで俺の成績が落ちなけりゃいいんだろ?」 当然のように言い放った伊達にいやいやおかしいだろうと思いつつ、反論すらも面倒でごくごくとビールを流し込む。 「言っとくけど、どれだけ渋っても俺が出掛けなきゃ意味無いんだからね」 「いいよ、俺がここに泊まればいいだけだし。」 そう言って取り出されたお泊まりセットに俺は唖然とした。 |