通りには、たくさんの屋台が並んでいて、一軒一軒内容を確かめながら歩く。 「政宗、食いたいもん何でも言えよ。」 「ん、」 さっき佐助のことを思い出して勝手に落ち込んでしまったが、せっかく二人が楽しませようとしているんだから、思いっきり楽しんでやろう。 「ん?」 そう思って何を食べようか品定めしていると、ついさっき別れた真田が屋台から手招きをしていた。 「おい?政宗?こらっ!」 真田の屋台に行こうとしたら元親が手を掴んできた。む!邪魔をする気だな!と怒ればぎゅ、と手を握られた。 「一人で勝手に歩くなって言ってんだ。おら、手離すなよ。」 「いいなぁ元親。よし政宗、ワシとも手を繋ごう。」 二人ともいい年して迷子になるのが怖いなんて仕方ねぇ奴らだとは思うが、家康に関しては俺が年上なんだから黙っててやる。 「政宗殿!よくぞ来てくださいました!」 「なんだ政宗、真田と知り合いか?」 「さっきちょっと。」 元親が、で、どれにする?と聞いてきたので商品に目を向けると、串に刺さっただんごがずらりと並んでいた。 「あんた団子売ってんのか!」 「はい、道場の子供たちと作りました。お代は結構ですから食べてみて下され。」 俺はずんだ、家康はきなこ、元親はみたらしをそれぞれ頼み、屋台を後にする。あいついい奴だ。 「全く、真田の野郎政宗に惚れてやがるな。」 「はは、まぁ仕方ない。」 祭り会場から少し外れた芝生に三人で座った。ようやく二人から手を離され、団子やたこ焼き、焼きそば、ベビーカステラ、ついでに元親が射的で獲ったぶさかわいい鬼のぬいぐるみなんかを渡される。 「さ、食おうぜ!」 こうして三人で何か食べてると、昔を思い出す。元親は今よりケンカっぱやくて、家康は口先ばっかの駄目な奴だった。それが二人とも、なんか格好良くなっちまって。 「あ、」 「花火始まったみたいだな。」 どん、と音がして、真っ暗な空にきらきらが飛ぶ。ああ、佐助と見たかったな、なんて考えてしまい打ち消すように頭を振る。 どん! 「なっ!?」 突然の背中への衝撃に思わず変な声が上がった。元親と家康も俺の声に驚いたようで一斉に振り返った。 「政宗!って…なんだてめぇ」 「元親、stop!」 拳を握りしめた元親の腕をどうにか押さえる。家康が俺を庇うように立ち、小声で聞いてきた。 「知り合いか?」 その質問に頷き、退いてもらう。まさか、なんでここに。そんな疑問が頭を駆け巡るが、兎に角相手の目を見た。 「佐助…なんでここに…」 「なんで?GPSつけてるからに決まってるじゃん。」 「あう、」 そういえば、勝手に俺がいなくなるからと携帯のGPS設定されてるんだった。 「そ、れはいいとして。なんでお前が怒ってるんだよ。」 「怒りもするでしょ」 キツい口調に怯みそうになるが、どう考えても俺は悪くない。そう思ったら、あのとき覚えた悲しみよりも、怒りの方が勝ってきて、気がつけば俺は佐助に怒鳴り付けていた。 「なんでお前が怒るんだよ!俺が、どんだけ悲しかったかわかるか?家にすら入れてもらえなくて、誕生日だって…過ごせなくて…」 悔しくて下唇を噛んだ。家康や元親はどう思ってるだろうか。でも今はそれどころじゃない。 「俺だってね、色々考えてたんじゃん!せっかくの誕生日なんだから、何食べよう、どこ行こうって!なのに政宗がかまってかまってって邪魔 するんでしょ!」 「だって!」 我儘を言ってることはわかってる。佐助にだって自分の生活があって、いつだって俺と一緒にいれるわけじゃない。 「俺は…佐助と一緒にいてぇんだ。我儘だけど、でもこれが、俺だから、」 「そうだぞ。これが政宗だ。」 「政宗と付き合うならそれくらい我慢しやがれ。」 二人が俺を挟んで言うと、佐助がはぁ、と溜め息を吐いた。 「それくらい、分かってるから付き合ってるんですけど。」 「あ?」 元親の言葉を遮って佐助が動いた。ばっと視界が暗くなって、あ、抱き締められてるな。と思った。 「ごめん。冷たくしたのは反省してる。」 「さすけ…」 「でも、突然いなくなんないで。」 佐助の体は汗で濡れていて、心臓の音も速くて、走ってきたのがわかる。 「ね、遅くなったけど。」 花火が上がり、視界がぱっと明るくなったと思えば、佐助の顔が近付いてきて、すぐに暗くなった。 「誕生日、おめでとう」 ▼さいごに 約一ヶ月間にわたるお誕生日企画となりました。新暦?が9月5日にあたるそうなので頑張ってみました。 家康と元親が完全に空気ですが、ちゃんといます(笑) このときどうしていたのかを後日談で書きたいです。 あまり電波っぽくなかったですが、ギャグ風味で楽しかったです。 長い間お付き合い下さったみなさま、ありがとうございました。 |