空がだんだん暗くなり、いよいよ祭りが盛り上がろうかと いう頃、元親からメールが来た。 「政宗、元親ももうこちらに向かっているようだ。」 ワシの言葉に政宗が口を尖らせ、遅い!と怒る。大方政宗が勝手に動いたのだろうが黙っておく。 「それにしても久しぶりだな。元気にしてたか?」 「あぁ!独り暮らしも慣れたら楽なもんだぜ。」 「そうか、友達も出来たか ?」 「友達っつーか、」 政宗がちょっと照れた顔をした。しかし、その顔も一瞬にして暗くなる。 「どうした?ケンカでもしたか?」 下を向いてしまい表情は読めないが、急にこちらに帰ってきたのも恐らく交遊関係が問題なんだろう。政宗は年下のワシが言うのもなんだが人付き合いが下手だった。 「まぁ落ち込むなとは言わん。だが、折角の誕生日なのだから。政宗、ワシは笑ってほしいぞ?」 政宗がぱっと顔を上げる。その頭を軽く撫でてやりながら、昔は何でもないことでよくこいつに頭を撫でられたなぁと少し回想する。 「俺、が誕生日なの…覚えてたのか?」 「ん?あぁそうか、まだ言ってなかったな。誕生日おめでとう政宗。忘れるわけないだろう?」 そう言うと笑うかと思ったが、政宗はきゅっと眉を寄せて小さな声で『Thanks』と言った。政宗はワシより年上なのだからいちいち交遊関係に口を挟む必要もないだろうと聞かないつもりでいたが、こんな切ない顔をされたらどうにかしてやりたいと思ってしまう。 「何かあったのか?」 「…別に、」 「本当に何もないならいいが、辛いなら話してくれると嬉しい。」 遠くで祭囃子が聞こえる。政宗がゆっくり口を開いた。 「俺、」 「おーい、政宗!家康!」 声の主は元親。政宗は再び口を閉じてしまったが、元親を責めることなど出来ない。 「なんだぁお前ら?時化た顔してよ。」 元親が政宗の肩に顎を乗せ、わしゃわしゃとその頭を撫でると、政宗の表情はまたぱっと変わった。 「別に何もねぇよ!早いとこ祭り行こうぜ!」 「おーそうだそうだ。花火に備えて腹ごしらえしねぇとな!」 政宗が今は祭りを楽しむと決めたのなら、ワシがいちいち聞くわけにもいくまい。その上せっかく笑ったのだから尚更だ。既に数歩先を歩く二人の後をワシは追った。 |