手を繋ぐよ | ナノ

喫茶店で一端別れ、夕方に待ち合わせ場所に行くと、濃紺の浴衣を着た政宗が猫を追いかけて走り回ってるのが見えた。

「政宗、お前何してんだ?」

後ろから声をかければこちらに振り返り、あぁ、と手に持っていたお面を見せてきた。

「このバサライダーのお面そこの店で買ったから、つけてやろうとしてた。」

そう言って、去っていった猫を見つめながらお面を自分の頭の後ろにセットする。これが宇宙人なんてあだ名がついた理由だということを、こいつは少しも気付いていない。

「そうか、残念だったな。」

しかし深くは突っ込まず、頭を撫でてやるとふるふる頭をふり、小十郎にやるからいい、と言った。子供用のお面を?と聞き返しそうになったが、あの人ならきっとお面を付けるんだろうな、と想像するとおかしくて少し笑ってしまった。

「家康は?」
「あぁ、あいつ神社の準備手伝ってるらしいから神社で待ち合わせ。じゃ、行くか」

ぱっと手を出してやれば、なんの迷いもなく掴んでくるところは子供の頃から変わってねぇな、と思う。本来なら、はぐれるからというような歳でもないし、そもそも男同士で手を繋ぐなんてどうかと思われるかもしれねぇが、こいつは突然歩くのをやめたり、猫を追いかけに行っちまうからこうでもしてなきゃ気が気じゃねぇ。

「政宗、勝手な行動はすんなよ?こんな場所ではぐれたら大変だからな。」
「でも元親は見つけてくれるだろ?」

当たり前のような顔して言われた台詞がどれほど破壊力を持っているのか気付いてないこいつは、きっと根っからの小悪魔に違いない。



家康と待ち合わせしている神社までの道のりは既に客がひしめき合っていて、人混みになれていない政宗はふらふらしている。

「政宗、おぶってやろうか?」
「い、いらねぇ!」

ぷい、と顔を背けた政宗にこっそり笑っていると、前方から声をかけられた。

「元親じゃないか!」
「おお、慶次か!ついでに鶴の字」
「ついでとはなんですか!」

高校時代のダチと後輩。同じ地元と言えど最近は会ってなかったから懐かしいもんだ。

「今から孫市と待ち合わせなんだよ」
「サヤカか、にしても鶴の字、おまえ七五三みてぇだな」
「ひどい!あなたなんて一人でお祭り参加じゃないですか!僻みです!」

びしっと指を指され、俺は首を傾げる。それと同時に嫌な予感がしてゆっくり後ろを振り返る。

「政宗?」

握っていた手はいつの間にかなくなっており、慶次と鶴の字も不思議そうにしている。

「わりぃ、ちょっと探してくる!」

何処に行ったのか検討もつかなかったが、俺はとにかく政宗を探すために走った。


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