8 | ナノ


テストも終わり、成績もつけた。後は成績表を渡せば終わりだ。俺は名簿順になった成績表の中から問題児である伊達のものを取り出した。評点は4.9。足りてないのは恐らく出席だろう。

(受験も楽勝でしょ、)

伊達に絡まれるようになってからあいつの模試結果や今までの成績を見てみた。成績は驚く程良く、全国模試なんかでは上位に名前が載る程だった。はっきり言って、うちの高校にいる意味がわからない。

ぼんやりその成績表を眺めていると、机の隅に置いていた携帯が鳴った。

「メール…」

メールボックスを確認すると、見たことのないアドレスだった。が、まぁアドレス変更なんかも入れると見たことないアドレスからくることくらいよくある訳で、俺は特に考えることもなく、そのメールを開けた。


『せんせ、俺のアドレス登録してくれよな。』


俺は目が点になった。
誰からなんて分かりたくもなかったけど分かってしまう自分が嫌になったというか、ていうかあいつ どこで俺のアドレス入手しやがった。よし、もう無視を決め込もうと携帯を閉じると再び携帯が鳴った。

『な、せんせ。もうすぐでせっかくの夏休みなんだから、俺先生と遊びたい。』

俺は盛大に溜め息を吐いた。こんな文面だとさすがに無視するわけにもいかない。仕方なく返信する。

『お前ね、どこで俺のアドレス知ったの?そして仮にも受験生なんだから遊んでる暇ないでしょう。』

これで一応気になることは聞けたし、遊びの約束もやんわりお断り出来た。ふうと息を吐いたのも束の間、再び携帯が鳴る。

『別に変なルートで仕入れたんじゃねぇから安心していいぜ。せんせ俺の成績知ってる?今更勉強しなくても余裕だから。』

こいつは駄目だ。どうしようもない。俺は携帯をベッドに放り投げ、明日学校へ持っていく書類の整理をしようと玄関に置きっぱなしだった鞄を取りに立った。

ピンポーン

鞄を持ったその手で鍵を外して扉を開ける。なんだっけ、通販でもしたっけ。

「来ちゃった」

持っていた鞄が床に落ちる。それを拾い上げる白い手の主は、休日だからかいつもの様な格好はしていない。

「だ…て?」
「政宗、だっつの。まぁいいや、入 れてくれよ。」

閉めようと思った扉は伊達によって既に鍵まで閉められていた。

「せんせ、お昼まだだろ?」

広げられたフリルたっぷりのエプロンに俺はとうとう目眩がした。



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