「政宗様、何でもお好きなものを仰ってください。」 折角の散歩だったが、あまりの暑さに政宗様の体調が気になり、半ば強引に喫茶店で休憩することにした。 「俺、ブラッドオレンジジュース」 いつもならホットを頼む俺も喉の渇きを癒したくてアイスティーを頼む。ついでにケーキでもと思ったが、帰りにケーキを買って帰るのだから不要かと、飲み物だけにした。 「もしかして、政宗?」 アイスティーが半分くらいになったところで、そんな声が聞こえた。 「へ?」 「俺だよ、ほら、」 「あ、あ!もと、ちか?」 隣の席から声を掛けてきたその人物に俺も見覚えがあった。長曾我部元親。政宗様の幼馴染みで、中学時代政宗様を宇宙人なんていう失礼なあだ名で呼ばなかった少しは見込みのある奴だ。 「久しぶりだな!いつこっちに来てたんだよ!」 「昨日、ちょっとな」 長曾我部は政宗様の隣に座り、然り気無く肩を寄せた。 「お前相変わらず美人じゃねぇか!んー、つか色っぽくなったか?」 そう言いながら政宗様の顔を覗き込む。近い。近すぎる。それ以上むやみに近づけば、見えない刀で百万回伐ってやると考えたところで長曾我部が顔を上げた。 「もしかしてお前、今日誕生日か?」 政宗様は目を丸くさせると、少し照れたようにお前よく覚えてるな、とはにかんだ。そんな様子を微笑ましい気持ちで見ていると、長曾我部は政宗様の頭をぽんぽんと手を置いた。 「誕生日おめでとさん」 「Thank You…」 政宗様の顔はほんのり赤い。照れを隠すためか、ものすごい勢いでジュースを飲み干した。そんなところも相変わらずでかわいらしいと思っていたら長曾我部の野郎も同様に思ったようで、お前まじでかわいいな、なんてほざく。 「も、元親、なにしてんだ?」 「ん?俺か?俺は今日の祭りの…」 そういえば今日が祭りだったか、なんて考えている間に長曾我部が政宗様の頭を犬にするような手付きでわしゃわしゃと撫でながら言った。 「政宗も来いよ、家康も来るしよ。何でも好きなもん買ってやる。」 俺の言いたかった一言を先に言われ、少々悔しかったが、政宗様がこちらへ来られなければプレゼントはご実家に郵送するつもりったので、今は政宗様の思った通りにさせようと、黙っておいた。 「Ah〜、祭りか、」 政宗様が此方を見る。さすがに保護者がいないといけません、と怒る年でもないので、構いませんよ、と言うと、ふるふると頭を振った。 「俺、小十郎と散歩する約束してる…」 「政宗様…!!」 そんなことを考えてくれているなど露程も思い至らなかった。もちろん、折角のめでたい日なので自分も傍にいたいたいのはやまやまだ。しかし。 「小十郎のことはどうかお気になさらず。昨日と今日ご一緒にいれただけで十分ですよ。」 笑っていえば、政宗様も笑う。置いてきぼりになっていた長曾我部が面白くなさそうにこちらを見ていたが、無視だ。 「政宗様、くれぐれも鬼と狸にはお気を付けて」 「?」 |