嘘偽りは御座いません。 | ナノ

朝一からぎらつく太陽の下で、丹精込めて作った野菜を収穫するのは、実は体力がいる。暑さで体力は奪われるし、その後の仕事にも響く。しかし、この自分の子供のように育てた野菜を、それ以上に愛情を注いでいる人に食べてもらうとなれば話は別だ。

「政宗様、そろそろ起きましょう。」

掃除を施したゲストルームではなく、俺のにおいの染み着いた寝室がいいと言って俺のベッドに入ってきた政宗様は、昨日突然やって来た。

「小十郎、泊めてくれるか?」

小さなバッグひとつでやってきた政宗様を見て直感的になにかあったのだろうと思った。深くは追求せずに、仕事が終わるまでこちらでくつろいでいて下さいますか、とリビングに通せば生まれたての子猫のような目で、ふるふると頭を振った。邪魔しないから、と言われて部屋に入れない程、俺の政宗様に対する耐性は強くない。

部屋に入れると政宗様は静かにしていた。昔なら飛びついてきたけれど、そんなことをする年でもないかと思い仕事にとりかかった。しかし剰りに静かだったので不思議に思うと仕事はなかなか進まず、俺は机を離れ、ソファに座っている政宗様に声をかけた。

「政宗様、どうされたんですか。」
「どう、って」
「いつもの元気がありませんな。」

そう言って頭を撫でてやると、政宗様はきゅと唇を噛んだ。

「小十郎、俺、鬱陶しいか?」

形の良い頭を撫でていた手が思わず止まる。

「は…今なんと…」
「だから、俺って鬱陶しいか、って」

泣きそうな目で、どうなんだと訴えてくる。鬱陶しい?政宗様が?そんな馬鹿なことがあるか。

「どこのどいつに言われたのかは分かりませんが…」

俺は自分よりも小さな体を優しく抱きしめ、その背中を擦りながら語りかける。

「この小十郎、生まれてこの方政宗様に対してその様な感情を抱いたことなどありません。」
「う、嘘だろ」
「何故嘘を吐かねばならんのです。愛しいと思いこそすれ、鬱陶しいなどと…」

俺の言葉に政宗様の瞳がきら、と輝く。

「じゃぁ小十郎、俺にかまってくれるか?」
「ええ、勿論。」

甘やかしすぎというのは昔から言われていたことだし今更仕方のないことだ。それにこの時期ばかりは甘やかしてもやりたくなる。



俺はそこで回想を止め、寝ぼけ眼で朝食を待っているだろう政宗様の元へ戻る。
自慢の野菜をふんだんに使った朝食は胃に優しい内容にしている。

「さぁ、お待たせいたしました。朝食にしましょう。」
「Okay、」
「政宗様、」
「ん?」

手をあわせていただきますと言う直前の政宗様は早く食わせろと言わんばかりに少し眉間に皺を寄せる。俺はそれに少し困った笑みを浮かべて言った。

「お誕生日おめでとうございます。」




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