離れたら死んじゃうよ。


離れたら、死んでしまう気がして、俺たちは今日も必死に繋がろうとしている。

「暑いね、」
「暑いな。」

からからと音を立てて首を振る扇風機が俺の伸びた前髪をふわふわと浮かせる。じっとりとかいた汗が気持ち悪い。

「節電とか言ってたけどさ」
「ん?」
「うちそもそもクーラーないしね。」

あるのは古ぼけた扇風機と、今年の夏の主食となったアイスを守るための冷蔵庫。

「図書館無駄に行ったな」
「ねー、小学生のママさんからの視線が痛かったよね」
「侮蔑の目だったよな!」

毎日のように涼みに行っていた図書館で、毎日のように手を繋いでいたから回りの皆さんには多大なるご迷惑をかけたんだけど、全てはこの暑さが悪いんだ。

「あー暑い。もう秋ですよ」
「秋だな。あ、松茸食いたい」
「でたよ、セレブ発言!」
「セレブか?」

政宗は今でこそこんな極貧生活ですが、実家に帰れば冷暖房完備のお城みたいな家で過ごすブルジョワだ。しかしそれをいまいち理解していないので、同棲を始めた当初は鮑が食卓に並んだりして俺は随分と肝を冷やした。

「秋っつったら栗ご飯だよなー」
「あと、そろそろコンビニのおでんだね」
「あ、おでん食いた…くねぇ!暑い!」

確かに今の気候でおでん食べようって気にはならないけども。でもいいな。もう少し涼しくなったら第一回おでん祭をするんだ。ふたりでスーパー行って、おでんの具を買い込んで、政宗お手製のお出汁で煮込む。と、そんなこと考えたら。

「お腹空いてきちゃった」
「こんな暑いのによく食欲わくな」

政宗が驚いたような顔をする。いや、驚くっていうよりも気持ち悪いものを見るような目だ。

「んーあのさ、」
「なんだよ」

異常気象に節電対策。今年の夏は暑かった。しかし何よりの原因は俺たちにあると思う。

「とりあえず、政宗は俺から降りようか。」

俺の首元に顔を埋めてぴったり体を重ねている政宗を揺する。体が密着しているところは汗がびっしょりで気持ち悪い筈なのに、政宗は降りようとしない。

「暑いのは俺たちがこうしてくっついてるのも原因だと思いますが。」
「んなこと言ってお前だって俺の腰に腕回してる。」
「あら、」

政宗の腰が俺の腕の定位置過ぎて気づかなかったと言えば、思わず二人で顔を見合わせて笑ってしまう。扇風機が政宗の髪を揺らした。




▼さいごに
剰りにも暑かったもんで書いてみました。久々にぼろアパート話です。アパート話の二人は離したら死んでしまうくらいらぶらぶです。

お付き合いありがとうございました!







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