「で、政宗の調子はどうなんだよ」 「ん?あぁ、もう全然大丈夫。」 チカちゃんといつもの居酒屋で少し遅めの晩ご飯を食べている。 政宗はあの後突発性の難聴も回復し、声の方も治療中ではあるけど順調に回復している。チカちゃんや慶ちゃんを見て怯えることもないし、仕事にも復帰した。 「俺たちの愛も確認できたわけだし!」 「よく言うぜ。本気で落ち込んでたくせによ」 まぁそんなこともあったよね、とジョッキを空けたところで入り口の方面から騒がしい声が聞こえてきた。 「佐助!元親殿、待たせたでござる!」 相変わらずの大声で話す旦那に案内のお姉さんも苦笑いだ。それを恥ずかしく思っていると、旦那の後ろからひょこ、と手が現れ、そのまま旦那の頭を叩いた。 「政宗殿!」 政宗は人差し指を立てて口元に当てる。静かにしろ、というポーズに旦那が慌てて口を押さえた。 「遅かったね二人とも。先飲んでるよ」 座席を詰めて二人に座るよう促すと、旦那がふるふると頭を振った。 「実は先ほど出会ったのだ。」 「は?誰に?」 旦那の突拍子も無い話には慣れっこだが、いい加減話の順序ってもんを覚えてほしい。そんなことを考えていると、政宗がまだ本調子ではない声で後ろを指さしながら言った。 「小十郎と家康。」 「へ…」 「政宗様、お召し物を、」 「いやぁ、ワシまで良かったのか?」 一気に狭くなったテーブル。目の前には片倉さん。気まずいです。 「そうか、政宗は猿飛さんと付き合っているのか」 「そうだぜ、今回も痴話喧嘩みたいなもんだ。」 対角線上の二人がこんな話をしているもんだから、尚更気まずい。政宗はというと俺の隣で旦那と何かお話しているから俺のこの気まずさに気づいてくれない。 「猿飛…」 「は、はい」 片倉さんに怒られる要素がありすぎて、俺は静かに顔を上げる。しかしそこにあった片倉さんの顔は意外なまでに穏やかだった。 「お前、いい上司に恵まれたな。」 その視線の先には、真田の旦那がいる。俺には片倉さんがなんの話をしているのかは分からないが、旦那は確かに俺にとってこれ以上ない上司だ。 「そう、ですね。」 俺の答えに片倉さんがふっと笑った。 |