気がつけば、病室の窓から日が射していた。寝てしまったのか、起きていたのか定かではなかったけれど、丸椅子に座りながら一晩過ごしたことはどうやら間違いないらしい。 「まさむね、」 白いベッドをのぞき込むと、どうやらまだ寝ているようだった。眠りの浅い普段なら、名前を呼んだだけで目が覚めるのにと不思議に思ったところで、政宗の耳は聞こえなくなったんだということを思い出した。思い出した、というよりは思い知らされた、という感覚に近かったかもしれない。 腕時計を確認すれば、7時前。昨夜はショックの剰り考えられなかったが、一旦うちへ帰り、入院の準備や職場への連絡をしなくてはならないと立ち上がる。腰が痛い。政宗の頭を優しく撫でて額にキスをした。取り敢えず医者か看護士に政宗が目覚めたら連絡をくれるよう頼もうとドアに手をかけた瞬間、どさりと何かが落ちる音と掠れた、悲鳴のような声が聞こえた。 「政宗っ!」 振り返れば白い掛け布団と共に、床を這うようにしてこちらに手を伸ばしている政宗の姿。 表情は泣きそうな、怯えるような顔をしてて、尋常ではない雰囲気だった。 「政宗、大丈夫?」 駆け寄って体を起こしてやると、がたがたと震えているのがわかり、俺は助けてやれなかった自分にどうしようもなく腹がたった。 「怖かったね、助けてあげられなくてごめんね。」 抱きしめても、震えは止まらない。ごめんね、と伝えても政宗には届かない。キスをしても政宗の喉からは隙間風が吹くような掠れた音しか聞こえない。 窓から射す太陽とは対照的に俺たちふたりの心は闇夜のように暗かった。 |