佐助が仕事に出てくるのが不定期になった。理由は知っている。佐助の恋人である政宗殿が、不幸な事件に遭ったのだ。 悲痛な面持ちでそれを伝えに来た佐助にも劣らぬ程、事件を聞いた俺の顔は酷かったそうだ。 政宗殿とは佐助を介して知り合った。強くて美しい人だと思った。そんな彼が塞ぎ込んでいるなんてショックで、仕事はなんとかするからと(実のところ仕事は山積みになってしまっている)佐助に政宗殿の傍についているように言った。佐助には普段から助けてもらってばかりいるから、こんなときくらい力になってやりたいと思ったのだ。 「だと言うのに…」 俺は携帯を胸ポケットに仕舞った。佐助からのメールに返信しようと思ったが、ひどく自己嫌悪に陥る佐助に、文章が思いつかなかったのだ。 「むう…」 メールから察するに、佐助はまだ政宗殿にとって自分は不要な存在なのだと考えているようだった。そんなわけないと言ったとしても、佐助は周りが思っているほど自身を評価しているわけではないし、どんなときでも冷静でいられるわけではないのだ。 『旦那、やっぱ政宗に俺は必要ないみたい。今日なんて怖がらせちゃったよ。おかしいね、付き合ってたはずなのに、政宗のことわかんないや。』 これほどまでに弱っている佐助は見たことがない。それだけ佐助にとって政宗殿の存在が大きいということなのだろうが。 「むうう…」 俺は心の中で尊敬する上司に謝り、手つかずの書類を鞄に詰め込んで会社を出た。 |