病室から出てきた金髪の看護師は俺の姿を確認すると、柔らかい笑みを浮かべた。 「過呼吸だ。命に別状はないから安心しろ」 そう言って看護師が去った後、俺は安堵の息を吐いた。 病室には入らず、先ほどまでの自分の行いを考える。苛立ちに任せて、自分は彼に何と言った?一番大切にしてあげたい人に、自分は何をした? 後悔先に立たずとはよく言ったもので、今更俺が悔いようが、扉の奥の政宗にはなんの意味もない。 そうやって暫く呆然としていると、不意に後ろから声をかけられた。 「猿飛さん、か…?」 「…徳川の旦那」 相変わらずの爽やかな笑みは、今はあまり見たくないものだった。彼の捜査に協力するどころか、俺は政宗を怯えさせるというマイナスの行いしかしていない。 「あ、の…なんでここに、」 「ああ、いやな、猿飛さんに電話してから暫く考えたんだ。儂は政宗を助けたいのに、その本人から逃げてていいのか、とな。」 政宗を驚かせてしまったことはショックだったが、だからといって話をしないわけにはいけないからなぁと徳川の旦那は頭を掻いた。 「それで今から政宗のとこへ寄らせてもらおうかと思ったんだが…」 「あー…そうですね、政宗は、今ちょっと」 俺が怖がらせてしまいました、とはとても言えず、言い澱んでいると徳川の旦那は、なら仕方ないなとやはり爽やかな顔で笑い、俺に頭を下げた。 「ではまた改めさせてもらおう。」 「あ、」 大股で廊下を歩くその姿に自分を恥じた。徳川の旦那が俺に政宗のことを聞かなかったのは、恐らく俺と政宗の間に何かあったのだと悟ったのだろう。 捜査に協力するどころか、足を引っ張っていることを情けなく思いながら俺も病院を出た。 |