「政宗様、随分と痩せてしまわれましたな」 見た目にも分かるくらいだが、体を持ち上げれば思った以上に軽く、それが悔しい。もっと早くに帰ってこれたら、いや、そもそも海外になど行かなければ。そんな考えが浮かんでは消えを繰り返す。 「では政宗様、暫しお待ち下さい」 痩せた体を車椅子に座らせ、その間にシーツを替える。只でさえ忙しいだろう看護師に、何でもしてもらっては申し訳ない。本来なら猿飛だってこれくらいの気遣いは出来る奴だ。いや、きっともっときめ細やかな気遣いだって出来るだろう。 「相当参ってるようだな…」 清潔な香りのするシーツに替え、座っていた政宗様を再び横にさせる。すると備え付けのメモ用紙に何か書き付けた。 「これは…」 『これくらい、だっこされなくても自分で動ける。』 昔とは違うのだと言いたいのだろう。確かに自分が世話をやいていた頃とは違い身長も伸び、顔つきだって立派な大人だ。しかし、今回の事件前後では明らかに政宗様の様子がおかしい。こんな風に強がってはいるが、どこかで甘やかされるのを期待している顔をする。人のあたたかさを求める目をしている。昔のように… 『小十郎が政宗様をだっこしたかったのです。お気に召さなかったのならすみません』 そうやって書くと、少し焦ったようにまたペンを走らせる。 『仕方ないやつだなお前は!』 『ええ、すみません。いつまでたっても政宗様離れが出来ないようです。』 これはまぁ、本当のことだが。 『ですから政宗様が甘えて下さることが嬉しいのですよ。』 これも嘘偽りなどない。 例えば俺が、昔の様に親であり友であり恋人の様な存在であったなら、甘やかしてばかりではいられなかっただろう。 しかし俺は政宗様の親でも友でも恋人でもない。だからこそ、誰よりも何よりも政宗様の味方でいたいと思うのだ。 |