政宗が再び眠りに就いたのを確認してから静かに病室を出る。しなくてはならないことが沢山あるのに、白い廊下をただ呆然と見つめることしか出来ない。 (怖かった、んだろう。) 男が男を怖がるという感覚が俺にはよくわからないけれど、あの怯えようを見ると途轍もない恐怖を植え付けられたんだろう。 (なんで…) 携帯を取り出して、病院では電源を切らなくてはならないことを思い出す。診察時間はまだだから、ロビーに着いても誰もいなかった。 (政宗だったんだろう、) そのまま裏口へ向かい、出たところで再び携帯を出し、滅多にかけたことのない政宗の保護者とでもいうべき人の名前を探す。 「あー…なんて言おう。」 いや、言うことなんて決まってるけれど。変な緊張を解すため、一服しようと煙草を出した。それなのにライターが見つからない。 (なんだってんだ) 煙草をポケットに突っ込んで、俺は通話ボタンを押した。 |