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「神父さま!」

子供の泣きそうな声で、元親は目を覚ました。見渡せば見慣れた施設の中庭で、この寒空にも関わらずいつの間にか眠ってしまっていた自分はそうとう昨日の出来事に参っているのだと苦笑いをした。

「ん、どうした?男が簡単に泣いちゃいけねぇぞ。」

子供の頭に手を置けばぎゅうと握られる裾。

「神父さま、いつきがいなくなっちゃったよ…」
「あ…?」

一瞬何も考えることが出来なくなった元親だが、少ない単語をさらに分解して意味を理解していくにつれてどくどくと心臓が早くなった。

「いつからいねぇんだ?」
「さっき、伊達の兄ちゃんが来てから…」

元親は目の前が真っ赤になるのを感じた。ベンチから立ち上がり、後を着いてくる子供に必ずいつきを連れてくるからと約束をして教会の敷地を足早に出る。目的地ははっきりとしていた。



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