小説 | ナノ

「そういうわけで少女も元軍人も無事に帰還。ふたりの行方はわからない。事件は再び闇に葬り去られたというわけだよ。」
「ふたりは死んだのでは…?」
「どうだろうね。遺体も何もあがらなかったそうだ。あぁ、あのロザリオは機体から見つかったものだがね。」

男はそう言うとソファから立ち上がる。佐助も慌てて立ち上がり、深々と頭を下げた。

「では私は次の用があるので失礼するよ。」
「あ、はい。あの、もう少しあのロザリオ見ていてもいいですか?」
「構わんよ。この話を知っている者以外には価値のない品だからね。」

男が扉を閉めると佐助は早速ロザリオに近づいた。金属性の、なんの変哲もないロザリオだった。

「そんなものに興味がおあり?」
「えっ?わ、あ、すみません。」

突如降ってきた声に驚いて振り返ればそこにはふわりと妖艶に笑う麗しい女が立っていた。

「あ、の、松永氏ならもう出ていって」
「あぁ構わないの。用があるのはこれなの。」

女はそう言うと壁に掛けられたロザリオを人差し指にかけ、そのままコートのポケットに突っ込んだ。

「え、」
「うちのdarlingが最後まで聖職者でいたい、なんていうからね。」
「だー、りん?」

佐助の脳内のコンピューターがとある仮定を導き出す。しかしそれを言葉として発する前に、目の前の人物が口角を上げた。

「あんたもあんまし深追いしない方が身のためだぜ?」

コートを軽やかに翻し、麗人は去っていった。






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