企画 | ナノ
感じる体温、その存在



注意:現代



ザクザク

「うー寒みぃ…」

「おーほんとだな。もちっと頑張れ」

「あ、おい待てよっ!!」

ザクザク

(…こんなことになったのも、慶次の所為だ!)















「ねーねー!寒い日って星が綺麗に見えるらしいよ!!」

バイト後ざわつくロッカールームで得意気に慶次が言った。政宗と佐助はそれを横目で見つつ、関わらないようそろそろと着替えを進める。

「何故でござるか?」

興味を持ったのは幸村で、幸村を連れて帰るという使命を負っている佐助はその一言に軽く溜息。

「なんでだろうねぇ。寒いから神様がご褒美くれるのかもよ!!」

「おぉ!!ろまんてぃっくでござるぅ!!」

佐助の溜息はさらに深まり、関わるまいと下を向いていた政宗は思わず笑いを零してしまった。

「何なの政宗〜今の笑いっ!!」

「だってお前等、馬鹿かよ。」

「もーほんと止めてよ慶ちゃん。旦那只でさえおバカさんなんだからっ!!あのね、旦那。寒いと星が綺麗に見えるっていうのは、空に雲が無いからなの。で、雲が無い分昼間の太陽の熱を封じておいてくれる物が無いから寒い、ってわけなの。わかる?」

「…うむ。兎に角ろまんてぃっくな理由では無いわけだな!!」

「あ、わかんなかったわけね。」

佐助の解説に幸村のわくわく感も薄れたようで、慶次はちぇー今日は綺麗に見えると思ったのに、と諦めモードに入っている。

(佐助good job!こんな寒いときに天体観測なんてしてらんねぇぜ!!)

ほっとしながら鞄を掴むと、掴んだ腕を掴まれた。ふいと見上げると、光に透ける、銀髪。

「Ah?」

「政宗、星見に行くぞ。」




















慶次の誘いならあっさりスルーしてみせるのに、元親の誘いとなれば、それはできない。

(だって…す、好き…つぅか、)

緩やかな山道ではあるが、時刻は午後11時を過ぎたところ。歩く辛さより体を冷やす寒さが辛い。それでも前を行く元親を政宗は必死に追いかける。

「おい、チカ、もうちょっとゆっくり、」

「あぁ、悪ぃ、ん。」

「え、」

ぱっと差し出された手に驚く。自分の骨ばった手とは少し違う、がっしりとした男らしい、手。

「え…と、」

「ちょっと引っ張ってやるから、もうちょい頑張れよ。な?」

(これは…やばい…)

「うわ、お前手冷たいな!!」

「お前があったかすぎんだよ、」

信じらんねぇ、と元親が強く手を握るのに比例して政宗の顔も赤くなる。元親が前を向いているのが救いだ、と政宗は俯いた。


「お、」

「え、」

ぱっと離れた体温に名残惜しさを感じつつ、元親の声に顔を上げれば、先程とは違う開けた視界が広がる。

「星より夜景に目がいくな。」

笑った元親の言うとおり、夜景のポイント程ではないが、視界の端の方にはネオンの明かりが輝いている。

「あー星は微妙だな。やっぱここらで見るには限界があるか。悪いな、付き合わして。」

寒い中自分を連れ回したことに反省している元親を見て、政宗は自然と笑みが零れた。

「お前らしくねぇな。俺は自分の意志で来たんだ。」

「…政宗」

さすがに寒かったけどな、と政宗が手を擦るとあーっ、と大声を上げて元親が政宗を抱きしめた。

「わ、ちょ、お前なにっ、」

「うるせー!!お前なんでそんなに可愛いんだよ!!」

「Ha?」

「あーもー俺だってちったぁ良いとこ見せてぇとかあるんだよ。星出てりゃなんかいい感じになって、うまいこと言えただろうによ。」

突然テンパり出した元親に付いていけない政宗はがっちりホールドされた腕の中、自分のうるさい心臓が元親にバレないかはらはらしていた。

「な、何言ってんだよ、わかんね」

「だからっ」

ばっと腕から解放されたかと思うと肩をがっしり掴まれ、目を合わされる。俯く猶予なんて、与えられない。

(元親の顔…真っ赤だ…)

「好き、なんだよ。お前のこと…」

温かかった筈の手は震えていて。
なのに顔は真夏のように、赤くて。

「お前の手、冷たくて焦った。肩も、冷えてるしな。」

「…馬鹿じゃねぇの、」

(元親の後ろ、星、光ってんだよ)

「俺、お前が誘わなきゃ来なかったし。」

「え…あ?」

「…っ、だから、その」

言い澱む政宗に元親がいつの間にか余裕の笑みを浮かべて、もう一度、抱きしめてきた。

「わっ、お前!」

「政宗、言ってくれよ。続き。」

「う、察せよ!!」

「んー心臓ばくばくしてるなぁとか顔赤いなぁとか?」

「うるせー!!そうじゃねぇっつーの!!」

ぼかぼかと小さく抵抗を試みれば、元親が小さく苦笑いを零す。

「はいはい、じゃぁまぁ言葉にしてもらうのはまたでいいからよ、」

「あ?」

再び距離が開いたかと思えば、小さなリップ音と共に、政宗の唇に冷たいものが当たった。

「キスくらいさせろ。」

「…言うの遅ぇよ。てかお前も冷てぇし」

「んー?俺はいいの。お前がいりゃ。」

「よくそんな恥ずかしいこと言えるな。」

顔を真っ赤にしつつも、きゅっと元親の袖口を掴んだ政宗は、明日慶次に飲み物くらい奢ってやろうかな、なんて考えに至った。

















下り道、相変わらず心臓はばくばくと音を立てていたけれど。不思議と寒いという感情は起こらなくて。それが右手から伝わる君の存在のおかげだなんて、

(絶対言ってやらねー!!)
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あとがき

まずは一万打ありがとうございました!!
そしてアンケートご協力ありがとうございました!!
幸せな親政とのことでしたので頑張ってみました。私にしては珍しく?出来上がる前の二人です。アニキを男前にしようとしたのに意外とへたれてしまいました(・_・;)
星が綺麗に見える理由間違ってたら華麗にスルーでお願いします。そしてこっそり教えて下さい(ほんとすみません

投票して下さった方のご希望に添えたかは不明ですが、私なりに幸せにしてみたつもりです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします。



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