「きょーや、」 「…ん…」 折角寝ているのを起こすのは、申し訳無いな、と思いつつ名前を呼ぶと小さく身を捩って毛布にくるまろうとする。 「恭弥、な、」 「なぁに、さむいよ。」 眉間に皺を寄せて小さく呟く姿はまだ眠たい、と訴えてくるようで、おかしかった。 「雪、降ってるぜ。」 「そ、」 「すんげー綺麗。光が当たってキラキラしてんだよ。いいよな、こういうの。なぁなぁ、」 「…いまなんじ」 「ん?二時半くらい?」 さすがに夜中に起こしたのはまずかったのか恭弥の眉間にさらに皺が寄る。それがやっぱりおかしくて指先でつんつんとつつけば、その手をきゅっと捕まれた。 「ねぇ、」 「ん?」 「…その雪と僕、どっちがいいの?」 恭弥の目は眠さを含んでいて、いつもより幼く見えた。それがまた、かわいくて。 「恭弥に決まってる。」 そう言って俺も毛布にくるまってぎゅっと恭弥を抱きしめる。 「だったら、こうして寝とけばいいんだよ。」 俺の腕の中に大人しく収まり、あったかい、と言った恭弥は既に眠りの世界に戻っていた。 「せっかくのホワイトクリスマスなのになぁ」 苦笑いをした声も、もう恭弥の耳には届いていないようだ。小さな寝息だけが部屋に響く。 「でもまぁ、」 俺はサイドテーブルに置いておいた小さな箱を恭弥の枕元に置いて、再び恭弥を抱きしめ、自分も眠りの体勢に入る。 「メリークリスマスな、恭弥。」 [*前] | [次#] |