小説 | ナノ
いとし いとしと 言う心



*権現がなんか黒い

かわいい、と思う。
きれいだと思わないわけじゃない。整った顔をしているし、スタイルだっていいし、一般的に言って、美人の部類に入るのだろう(男に美人、というのが一般的なのかどうかはまた別のはなしだ)。
「Hey、なにぼーっとしてんだ。」
「おお、すまん。」
政宗とは幼なじみだ。歳はみっつ離れていて、ワシが年下。政宗が年上。テスト前にはよく勉強をみてもらっていて、それは大学生になった今でも変わらない。
「おまえなぁ、一回の頃なんて般教ばっかだろ?ちゃんととっとかねぇと元親みたいに四回になっても一回生に混じって受けなきゃなんねぇぞ。」
本当に世話のかかるやつだぜ、と呆れる政宗にはは、と笑って返す。テストの度にこんなやりとりを繰り返しているが政宗が勉強をみてくれなかったことなど一度もなかった。
「それは勘弁だなぁ。」
「だったらちゃんとやれ。今coffee煎れてやるから飲み終わったら再開すんぞ、」
立ち上がった政宗の背中に、あ、と声をかける。
「コーヒーはブラックで頼むぞ。」
「は?なんだよmilkもいらねぇのか?」
「最近甘いの駄目なんだ。」
ワシの言葉に眉を寄せる政宗。ああほら、こんなところがかわいいのだ。

運ばれてきたのは、注文通りのブラックコーヒーとカフェオレ。
「政宗は甘いもの好きだなぁ。」
「ちがっ、甘いのが好きなんじゃねぇ!coffeeの苦さが苦手なんだ。だいたいおまえだってこないだまでmilkもsugarも入れてたじゃねぇか。大学はいるまでcocoaしか飲めなかったくせに。」
「はは、そうだなぁ。子どもだったからなぁ、」
そう言ってみるときゅうと下唇を噛む。ちょっと意地悪をしてしまったかなぁと思いつつ、そのかわいい様子を見ていると加虐心がわいてしまう。
「まぁココアが直接関係あるかは知らんが、背は伸びたなぁ。」
「な、」
悔しそうに下から睨んでくる様子に思わず破顔しそうになるのをどうにか耐えて少し下にあるその頭を撫でてみる。
「やめろ、バカ!勉強教えねぇぞ、」
「政宗、」
いつもより低めに、名前を呼ぶ耳まで赤くしてとぴたりと動きを止めた。
「ワシはおまえのことをかわいいと思うよ。」
「ふざけんな!!かわいいとか、おまえ死ねっ」
「穏やかじゃないなぁ、」
暴れてワシの腕を振り払おうとする体を逆に抱きしめる。すっぽりとはいかないが、悪くはない体格差だと思う。
「なにして、離せよ!からかうのも大概に、」
「からかってるつもりはないんだがなぁ。」
プライドの高い政宗は、いつだって年下のワシに弱みを見せまいと振る舞って、優しくて、強くて、男らしい。だが、長い間共にいるのだ。弱いところくらい知っているし、ワシに体格も、精神的にも抜かされたように感じていることにショックを受けていることだって知っている(ワシとしては己が今のように幼稚な加虐心、好きな子ほど苛めたいという類の、を持っていることをちゃんと理解しているから精神的に勝っているなど思ったこともない)。
「政宗ワシはおまえが好きだよ。」
あやすように背を撫でれば腕の中が静かになる。
「だから変に兄貴ぶらなくていいし、弱いところは見せてほしい。政宗は頼りがいもあるし格好いいが、かわいいと思う。守ってやりたいと思う。だからいい加減政宗もワシをちゃんと見てくれないか?」
な?と顔を覗くと、何故か目を真っ赤にした政宗が悪態をついてワシの胸に顔を埋めた。
「おまえ本当腹黒い…」
否定できない言葉にワシは笑った。




▼初の家政!!
家康のまえの筆頭ってなんかかわいいなって思った。
お付き合いありがとうございました!
(title:xx様)



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