小説 | ナノ




「なんでこんなことになったかねぇ、」

隅っこで怯える奇人伊達を庇うように立っている俺は別にヒーロー気取りなわけじゃない。言うなれば友人の謹慎処分中にその恋人を守ることになった仮のヒーローだ。

「ほら、伊達、立てるかい?」
「ひっ、」

見るからに怯えてがちがちと歯を鳴らす。まぁ恋人の知り合いとはいえ、同級生男子に服ひんむかれて目隠しされて頭から水ぶっかけられたらいくら無害ですよ、って言ったって信用ならないだろう。

「取り敢えずさ、上着貸してやるから着なよ。風邪引いちゃうぜ。」

ブレザーを脱いで羽織らせても伊達には肩幅が合わないみたいでずり落ちるのでジャージ貸してやらなくちゃな(伊達のロッカーは荒らされてたからジャージは制服と共になくなってると予想)、と思いながら肩をかしてやれば消え入りそうな声でおまえもなんかされるからやめとけよ、と言われた。

奇人伊達がこんなことになったのは9割佐助の所為だ。佐助は顔もいいし性格も当たり障りないことから女子にモテた。それはもうモテた。付き合う女の子に彼氏がいようがお構いなしで来る者拒まず去る者追わずが佐助のスタイルだった。そんなわけだったから佐助はわりと敵が多かった。でも佐助って格好いいことにケンカ強いしおしゃれだし付き合いもいいから彼女とられた!でケンカ売るにはリスク高いしただの負け犬でしかなかったから今まで平穏に終わってた。でもそんな佐助がぱったり女をつくらなくなった。本命ができたということで。大半の男子はほっとしながらも、でもどこにだって馬鹿っているもんで、今までの仕返しとして佐助の彼女を自分のもんにしてやろうと考えたりする奴がいた。そんな奴らが驚いたことは佐助の恋人がお人形さんのようにかわいい子ではなくて、黒塗り外車で登下校、普通の会話が成立しない、奇行が目立つエトセトラ、つまり伊達だった。いくら恨みがあっても男と付き合うのは無理だと思った奴らは趣向を変えた。
それは、伊達を苛めること。

そもそもあいつも気に入らなかったんだ、という取って付けたような理由も添付され伊達苛めは始まった。 でも伊達を溺愛してる佐助が気づかないわけなくて佐助はあっという間に苛めてた奴らをぼこぼこのけちょんけちょんにしてしまった。流血沙汰になったこのけんかは佐助の謹慎処分という形で幕を閉じた。
つまり、伊達にとって最悪の一週間が始まったということだった。佐助は謹慎が始まる前夜に俺に電話してきて、政宗をよろしく、と泣いた。

「そんなこと言われたら、やらないわけにいかないっしょ。」

ぽそりと呟けば伊達は不思議そうな顔をしたから取り敢えず笑って頭を撫でておいた。

「取り敢えずは守るからさ、必ず幸せになってくれよ?」

黒塗り外車で登下校、普通の会話が成立しない、奇行が目立つエトセトラ。そんな男と女遍歴がすごくて、男なんて天変地異が起こったって好きにならないだろうという友人が付き合うと聞いたとき、さすがの恋愛大好きな俺も耳を疑った。だけれども、そんな二人の恋だからこそ俺は精一杯守ってやりたいって思うわけだ。







▼慶次を活躍させたかったはなし。
お付き合いありがとうございました!



- 32 -


[*前] | [次#]
ページ:



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -