小説 | ナノ




黒塗り外車で登下校、普通の会話が成立しない、奇行が目立つエトセトラ。伊達政宗は何かと有名な人物だった。
そんな男と友人が付き合うと聞いたとき、さすがの恋愛大好きな俺も耳を疑った。だって奇人伊達はまぁ確かに美人ではあるけどどう見たって男で、友人の佐助だって名前通り男でこちらに関しては女遍歴がすごくて、男なんて天変地異が起こったって好きにならないだろうという感じなのだ。それでも二人は付き合っている、と初々しい中学生のように佐助が報告してきたので半ば呆れながらどういう経緯で何をきっかけにそんなことになったのかを放課後ファストフード店二階窓際で聞いた。

「え?俺と政宗の出会い?ああ、俺が美術準備室でサボってたときに突然入ってきて窓から飛び降りようとしたときのことね!衝撃的な出会いだったなぁ、」

にたにたと佐助は笑うけれど俺にはその思考回路がこれっぽっちも理解できないでいた。

「まぁさすがに飛び降りなんて驚いちゃったからさ、ちょっと待ちなって、って腕掴んで止めたらさ、おまえ俺のことあいしてくれるの?だなんて懇願する目で聞いてくるからもー勃っちゃったね。ぎゅん、てきたね。」
「どこでぎゅん、てなったのかわからなかったよ…」

友人の変態っぷりに俺は頼んだバーガーすら食べる気にならず、じゃりじゃりと氷だけになったジュースのカップをストローでかき混ぜた。

「だってさぁ、かわいいじゃん。生きてたくないけど死にたくない。死にたくないけど死んでみたい。死んでみたいけど愛されてみたい。愛されないとわかってるから生きたくない、って泣きながら言うんだよ。下半身にダイレクトにこないわけないじゃない。」

まぐまぐとバーガーを食べる佐助はなんら間違ったことなどこれっぽっちも言ってないような顔をしていたから俺は、ああこれは何を言っても無駄なんだろうなと思った。

「でも佐助はさ、重い愛は駄目なんじゃなかったかい?愛してる、って言われただけで別れてたじゃん。」

俺の質問を佐助は馬鹿にしたように嗤い、はは、そんなの俺に愛が無かったからに決まってるじゃんと言って退けた。つまり伊達を愛しているから伊達の重たい愛だって受け入れられるということなんだろうか。そりゃあ好き合ってないと愛なんて成立しないけど、佐助は極端すぎると思う。でも、

「ま、極端すぎるとは思うけどなんか少しほっとしたよ。」
「ほっと?」
「うん。だって佐助がこのまま只のヤリチンヤローだったらって俺ずっと心配してたんだから!ようやく真っ当な愛を知ったんだなぁと、」
「さりげなく酷いこと言うなぁ。」

そう言って笑った佐助はなんだか幸せそうだった。そうか、そんなに奇人伊達が好きなのかぁと俺が改めて思い知ったのは、ほんの一週間くらい前の話だ。





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