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「おばさんから電話があったんだ。携帯に。」

「母上が…」

母上は仕事先から俺のことを心配して佐助(補習があったらしい)に頼んでくれたらしい。ありがたくて目頭が熱くなり、それが恥ずかしくて俯くと、ぽん、と頭に手が置かれた。

「頑張ったんだな、偉いぜ“ゆっきー”」

わしゃわしゃと頭をひっかき回される。先ほど見た美しい顔を思い出し、かぁと顔が熱くなるのがわかった。

「そう、だ、佐助!この方は!」

「ん?俺のワイフ。」

「わ…?」

「あのね、ゆっきー、政宗がね、傘ふたつもってたからわざわざついてきて貸してくれたんだよ。」

だからちゃんと、お礼言いな、といわれて慌てて頭を下げる。“ゆあうぇるかむ”と美しい笑みでそういうとその人は下足室を出た。

「あ…」

「なに?あ…」

あれほど降っていた雨はいつのまにか止んでいた。

「はは、じゃぁアイスでも食べて帰ろっか。」

佐助の提案にのって三人でコンビニを目指した。道中、会話の内容などほとんど入ってこず俺はちらちらとその人の顔を盗み見ていた。

(美しい)
(肌が白い)
(胸がとくとくいう)

悪いことをしている様で、できるだけ凝視しないよう気をつけてはいたがやはり視線に気づくのか時折俺をみてはにこりと笑んだ。その度に俺の胸は苦しいほどどきどきと高鳴った。

アイスを食べ終わり、家まで送ってもらう。辛うじてありがとうございましたとだけ言えたが剰りの恥ずかしさに逃げるように家に入った。佐助がうしろでなにやら怒っているのも、この際無視だった。ドアを閉め、胸に手を当てる。今までこんなにも胸がどきどきしたことがあっただろうかとふと息を吐く。そして未だに自分の手に傘が握られているのに気がついた。

「しまった!」

傘が佐助のものか、彼の人のものかわかりかねたがどちらにせよ返さなくてはと先ほど閉めたばかりのドアを開く。まだ遠くへは行っていない筈だと敷地を出て左右を見渡す。

「あ…」

丁度驛の方に続く道。二人が手を繋いで歩いているのが見えた。

(なんだ)
(なんだ、ふたりは…)














「あの頃はかわいかったのになぁ、ゆっきー」

「あの頃?」

佐助ははぁと溜め息をついた。

「で、いつになったら政宗のこと諦めてくれるのかな?初恋は叶わないって知ってる?てゆうか人の恋人拉致監禁するのやめてください。」

佐助の腕の中にはかたかたとふるえる政宗殿。別段いやらしいことをしたわけではないのだからその様にふるえずともよいではないかと思ったがひっく、ふぅ、と泣いている姿が大変愛らしいので何も言わないでおく。

「兎に角、これ以上近寄らないで。」

佐助はいつになく真面目な顔で言ってくる。それもそうだ。八年も付き合った恋人に毎度毎度手出しされそうになりついには連れ去られたのだから。だが、

「無理な相談だ。」







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