小説 | ナノ
海と空



*微妙なAirパロ。
しんじゃうの苦手な方はリターン。












「海が見たい。」

暑い暑い日だった。
海など何度も見ただろうと笑ったら
どうしても、とお前が言うから
元就のとこの診療所から車椅子を借りてきてやった。

「暑い。」

夏のコンクリートは俺達を灼いた。
空からの容赦ない日差しを防ぐように
お前の頭には
幸村が野菜を持ってきたときに忘れていった
麦わら帽子を被せた。

「砂浜に降りたい。」

車椅子は重たくなった。
柔らかい砂で車輪が沈む。
それでも俺は青年一人を乗せているにしては軽い車椅子を押した。

「絵日記に書く。今日のこと。」

嬉しそうにお前は笑った。
俺もつられて笑った。
海くらい大したことないんだから、
明日の神社の祭りを書けばいい、と俺が言えば、
お前は、毎日書くから日記なんだと言った。



結局次の日は雨で
祭りは中止だった。
俺は悔しくて、
起きあがるのも辛そうなお前に
レインコートを被せて
自転車の荷台に乗せ、
神社まで走った。
祭りは当然やってなかったが、
二人でお神籤を引いた。
お前は大吉で、
もう悲しい夢は終わったから、と言った。


「海が見たい。」

昨日の雨が
嘘のように晴れた次の日。
お前はまた海が見たいと言った。

世間はどうやら
夏休みに入ったようで、
子供たちが
海へと走っていった。
それを優しい瞳で見送ったお前に
俺は、子供に負けてられないな、と笑った。
お前もつられて笑った。

「元親」

俺はお前と少し離れた場所に立った。
後ろはコンクリートの壁で、
その壁を越えた下は
先日二人で歩いた砂浜だった。

お前はゆっくり
車椅子から立ち上がる。
空と同じ色のパジャマを
身につけたお前は、
時折倒れそうになりながらも
俺が傍に寄ろうとするのを
頑なに拒みながら
一歩一歩確実に、
その足で歩いた。

「ゴール」

抱きついた体は
支える前に
地面へ崩れ
被せていた麦わら帽子は
はらりと落ちた。


















海はもう
すぐ傍なのに。
お前は青い空を見上げて
満足そうに微笑んでいた。





▽あとがき

わかりにくくてすみません。
まま→親
みすず→政宗
でした。
お話はぜんぜん違ってますのでパロディなのかなんなのか。
これについてはもっとちゃんと話を練って書きたいです。

お付き合い下さりありがとうございます。



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