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メルト



××××に
目が溶けたのだ。



交差点。ざわめき。クラクション。
寒い筈の町で、一人汗をかいた。


「はっきりとは言えませんが、ストレス、でしょうね。」

「ストレス、ですか。」

そわそわと首を揺らす政宗の肩に、ここにいるよ、という意味を込めて優しく手を置いた。

「何かありましたか?急激な環境の変化など…」

白衣を着た中年のおじさんが眼鏡の奥から俺に訊ねた。

「いや、俺の知る限りでは…政宗、どう?」

肩を叩いて、目を合わせ(たつもりになっ)て問えば小さな声で、なんも、と返ってきた。なんで俺を介しての会話なんだろうなんて疑問も感じることなく、だそうです。と白衣のおじさんに返した。

「では、お大事に。」


薬は処方されなかったから、お金だけ払って帰る。ストレスでしょう、ってどんな診断だよと思いながら止まったままの政宗の手を引いて病院を出れば、周りからの視線が痛かった。

「目、隠した方がいいのかな。」

俺の呟きは町の喧騒に消えた。











その日、普通に町に出た。しょうもない、記憶にも残らないような話をしながら歩いていた。交差点を渡り切って、隣に君がいないことに気がついた。

「まさむね…?」

交差点。ざわめき。クラクション。
交差点のど真ん中に、君が立っていた。
走って、手を引いて、怒鳴るみたいに問いかけた。

「ちょ、何してんのっ!!もう、あーびっくりしたぁ、」

「佐助、」

「なに」


















「目、変だ。」


















その日は寒空なのに太陽だけは妙に輝いていたから、強ち君の言うことは間違いじゃないのかもしれない。

「太陽に目が溶けたんじゃないかと思う。」

政宗は目が見えなくなった。
正確には、左目、が。
つまりまぁ、両目なんだけど。

「なんで太陽なの?」

どうにか部屋まで連れ帰って、これからのことを考える。繋いだ手を離す気は、無い。

「右目はさ、真っ暗なんだよ。」

「うん。」

「んでな、今日変になった方はさ、明るいんだ。太陽みたいな、さ。」

「ふーん。」


いつ治るんだろう。それとも治らないのかな。でも政宗があんまり悲しそうじゃないから、なんか別にこのままでいいのかな、なんて気がしてくるから、不思議。

「あ、」

「なに?治った?」

「左目、太陽に溶けたんじゃないかも。」

見えない筈の君の目がきらりと輝いた。










「これ、お前の髪の色だ。」










あとがき

政宗様の左目がどんな感じかといいますと、目を瞑って太陽を見たときの色が映ってるイメージです。きっと何らかの外的要因で目がおかしくなっちゃったんですが、目の奥に見えるその鮮やかなオレンジが佐助の髪の色と重なって本人は満足。本人が満足しちゃったから治らない。みたいな感じです。毎度毎度解説無いと意味わかんなくてすみません。

お付き合いありがとうございました!



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