小説 | ナノ
手繋ぎ



────手、繋ぎたい。



俺と政宗は同じ中学だった。成績とか家柄の問題で俺は名前を書いたら受かっちゃうようなおバカな学校に、政宗は俺でも知ってるような有名大学の付属高校へ入学。学校が始まる時間も違えば終わる時間も違うもんだからなかなか会えなかったけど、寂しがりの政宗の為に毎日メールは欠かさずしたし、週末は必ず二人でデートすることにしてた。まぁつまり、俺たちは所謂恋人、だったわけなのだけど。

その日も二人でデートした。デート場所はいつも俺たちが住む町から離れた所にしていて、その日もやっぱりそうだった。人が少ない所でこっそり手を繋いだり、掠めるようなキスをしたり、そんなことして幸せだなって思ってた。すっかり暗くなった頃、ふわりふわりと白い雪が降り出して、俺たちのデートは終わりを迎える。いつも通り駅まで歩いていけば、周りには沢山の恋人達がいて、寒さを凌ぐように寄り添いながら繋がれた手に目がいった。一方の俺達はというと、並んで歩いてはいるけれど、寄り添うこともなくポケットに手を突っ込んで、歩いていた。寒がりな政宗が震えているのを、唯見ているだけだった。


「…ねぇ、政宗」

「ん…?」

「手、繋ごうか…」

ポケットから出した手は冷たい空気に触れて、痛い程だった。俯いて出しかけた手を再びポケットに突っ込んだ政宗に、こんなに人が沢山いたらわかんないよ、と笑ってポケットの中の手をつつく。なんだか切ない顔をして俺を見上げた政宗がゆっくりポケットから手を出したので、ぎゅっと握ってやる。周りから見にくいようにさっき以上に寄り添えば、もしかしたら周りから只のカップルだと思われるかもしれないなんて淡い期待を抱いた。

「佐助」

「んー?」

「俺も本当はこうしたかった。」

俯いたまま言った政宗の表情はわかんなかったけど、その真っ赤な耳は政宗の気持ちを充分表しているような気がして、俺は横を向くふりをして政宗の頭にキスをした。









あとがき

これ実はもっと暗いはなしの続きがありました。手繋いでるのが政宗の高校の子にバレちゃってわーこいつほもだよ!!って話になる予定でした。でも暗いし長くなるので止めました。

お付き合いいただきありがとうございます!



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