「政宗、わぁちょっと、こんなとこで寝ないで!!」 「ん…ぅ」 政宗は困ったちゃん。いつでもどこでもおねむになったら寝てしまう。 今だって、買い物から帰ってきて両手に荷物持って、アパートの階段上ってる途中だっていうのに、うと、うと。 「危ないから、落っこちちゃうよ!」 急いで階段を上りきり、入っている卵に気をつけてそろりと通路に置き、急いで政宗の所に戻る。 ぼとっ 「あー、あー袋、」 一歩間に合わず政宗の指先からスーパーの袋が滑り落ちる。卵を持たせなくてよかったと思ったが、トマトは割れたかもしれない。 「…あ、わる…ぃ」 「政宗が無事ならいいんだけどね。よいしょ、」 落ちた袋と辛うじてまだ政宗の指に引っかかっている袋を左手に纏めて持ち、右腕で政宗の腰を支えてゆっくり進む。 「ほら、あとちょっと。ね、足上げて。」 ようやく上りきれば安心したのかすぅすぅ寝息立てて本格的に寝てしまった。慌てて左手のスーパーの袋を床に起き、両手で政宗を抱きしめる。 「あ、しまった。鍵、」 左手で政宗を支えてケツポケットからキーケースを出し、がちゃり。 スーパーの袋を横目で見ながら部屋に一つしかないベッドに寝かせる。額にキスをして、通路に置きっぱなしにしていたスーパーの袋計四つを取ってきて冷蔵庫にしまう。トマトはやり割れていて今日はトマトソースでも作ろうかな、と目を瞑る。 政宗は昼夜が逆転していた。何かしているわけではないのだけど、ひっそりひっそり泣きながら夜を過ごすのだ。 寝るときは一つのベッドに向かい合って抱きしめ合って眠りにつく。政宗の泣き声が聞こえている間俺は背中をさすってやるのだけど、さすがに4時過ぎには寝てしまうみたいだ。その間も政宗は泣きながら朝を待っている。 朝太陽が昇って9時頃になるとようやく政宗に眠気が差す。でも俺たちは学生で、基本的な活動は午前中なわけで。 目を瞑ったままの政宗の服を着替えさせ、靴下まで履かせたら擦りおろしたりんごを食べさせて、俺の用意が終われば目を擦る彼の手を引いて、一限終了間際に 授業に滑り込む。 そんな毎日だ。20時頃になるとようやく目が覚めるから、政宗とまともに話せるのはそれから俺が眠りに就くまでだ。 「そんな関係、楽しいか?」 かすがに言われた一言だった。 「え?どういうこと?」 「どうもこうも、そのままだ。お前が生まれたての赤ん坊を面倒見ているような今現在の生活が楽しいのかどうか聞いている。」 「あー」 ぶっちゃけかすがにだけはこんなこと言われたくなかった。彼女は自分のゼミの先生に淡い恋心を抱いていたが、それを告げるどころか常にやんわりとかわされていたのだから。 「別に俺様は楽しいけど?」 「はぁ?お前はなんだ、マゾヒストか?」 「いや、そんなんじゃないけどさ。」 この類の質問は政宗と俺様の関係を知っている人から何度もされているけど、どうしても俺の気持ちは伝わらない。 「なんていうかなぁ。かわいくてかわいくて仕方ない、ていうの?」 一番簡潔にまとめてみるとこれが一番しっくりくるかなぁと我ながら関心してしまった。 「かわいい?あれが?」 「かわいいよ!だって俺にだけ甘えたでおねむで泣き虫さんなんだから!!!」 「誰がのろけろと言った。」 かすがははぁと溜息をついて俺を静かに見据えた。 「お前達の関係は恋人なんてものじゃない。只の依存だ。しかも病的な。」 「いいね、それ。それくらいじゃないと俺安心できないや。」 にっこり笑ったらかすががもう救いよう無いな、って一言。 「そうかなぁ?俺的には最高なんだけど。」 確かに政宗がどこでも眠っちゃうのは困るけど、政宗が怪我しないならそれでいいし、あの甘えてくる仕草なんて子猫よりかわいい。 「お前達は」 「あ、政宗!ごめんかすが、政宗が椅子から落ちそうだ!」 指定された席から立ち上がり政宗の体を支えた俺にかすがの声は届かなかった。 お前達は 互いに互いの 首を絞めている あとがき あれおかしいな、明るい話を書こうとしたんですが、なんだかイヤな方向に… おねむ政宗様が書きたかったんです。か、かわいくないですか?おねむ萌え!! 書きたい物を詰め込んだらこんなことになりました。 お付き合いありがとうございました! |