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神様がいるとかいないとかそんなことは、愚問だ。そんなこと考えたところで救われる者は救われるし、救われない者は救われない。


ある日のことだった。
うちはオール電化なおうちだった。
政宗と出会ってから俺は煙草を止めていた。

政宗の誕生日、親ちゃんと、慶ちゃんと、真田の旦那と、ちょっと苦手な就ちゃんとでパーティを開くことにした。

政宗には内緒にしといた。驚かせよって。そんで政宗をリビングに呼んで突然電気消した。政宗ったら、ん?停電か?なんてかわいいこと、言うのね。ちょっと笑っちゃったけど、キッチンで親ちゃんと慶ちゃんがこっそり火、つけてくれたケーキ持ってきたのが見えたからハッピーバースデーの歌歌ったんだ。

はっぴばーすでー とぅーゆー

旦那なんてほんと大きな声で、就ちゃんの眉間、しわ、よっててね。

はっぴばーすでー でぃーあ

ケーキがテーブルの真ん中に置かれた。色とりどりの蝋燭にゆらゆら火が揺れている。

「政宗?」

親ちゃんが急いで火、消して。
就ちゃんが急いでまだ小さく火が残る蝋燭ケーキから抜き取って。
慶ちゃんが急いで電気つけて。
旦那が急いでタオル持ってきて。
俺はわんわん泣いて、ごめんなさいって繰り返す政宗をぎゅって抱きしめてた。


思えば親ちゃんも政宗の前では煙草吸わないよな、て思った。それは政宗が火が苦手と知ってたからじゃなく、単に煙草が苦手なんだと思ってただけなんだけど。

その日気を失った政宗の服を着替えさせたら、背中にいくつもの小さな火傷の痕があった。(俺達はプラトニックなラブだった。)


神様が人を救うとか救わないとか、そんなことは愚問だ。わかっているのは、この俺の大切な恋人が自分の誕生日ケーキの蝋燭すら消せないということだ。









あとがき

別に誕生日会でなくても良かったんですが、料理以外で火使う場面てそんなないよな…て思ってこうなりました。
悲しいバースデー。


お付き合い下さりありがとうございました!



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