※人でなしな佐助苦手な方はback願います! 頭はがんがん。 胃の辺りはぐるぐるしてて、鏡に映った自分の顔は真っ青だった。 目は濡れていて、そんな自分が心底気持ち悪くて、自分と目が合わないよう鏡を割った。 「おーい政宗、ここか?」 蒼白な顔して突然屋上から出ていった政宗を探し回る。飛び降りそうな勢いだったが、飛び降りるならあの場で飛び降りるだろうと、とりあえず死んではいないことを前提に探す。 入ったトイレの個室は全部空いていて、政宗はいないようだと踵を返したとき割れた鏡が目に入った。一度割ってから何度も殴りつけたのか鏡は細かく割れていて所々に血が飛んでいた。 「あー…」 死んではない。が、怪我はしている(しかも出血有り)に頭を切り替え再び探す。ふと気が付けば廊下には赤い点々が続いていて案外早く辿り着けそうだと階段を降りながら胸をなで下ろした。 のも束の間。 がしゃん、と音がしたかと思うと目の前の靴箱に政宗がうずくまっていた。 「おい、ま」 「あれ〜親ちゃんじゃん!」 「佐助…」 政宗が蒼白な顔して飛び出していったのも、ここにうずくまっているのも、呆気なく理解できた。 「それ、持って帰ってくんない?」 にこりと笑った佐助はうずくまる政宗を指さして、不安げな顔をしていた女子に笑いかけ、廊下を出ていく。 「さ、すけ…まって…」 通り過ぎようとする佐助の方へ精一杯伸ばした政宗の腕は、その人物によって踏みにじられた。 「っあぁ!!いだ、ぃ」 「当たり前でしょ、痛くしてるんだからさぁ。」 「おいおい、止めとけって。」 周りの生徒達がそわそわしているのを見かねて止めにはいると佐助はあっさり足をどけた。 「これに懲りたらさぁ、もう付き纏うの止めてね?」 そう言って政宗の薄い腹に、その細身のどこにんな力あるんだ?てくらい重い蹴りを喰らわして、佐助は手を振って女子と共に去っていった。 政宗はというと小さく呻いて口の端から唾液を零している。 政宗は佐助が好きだった。 佐助は政宗に好きだと言った。 ふたりは付き合うことになった。 でもそれは佐助の暇つぶしでしかなかった。 「おい、立てるか?」 「…ち、か」 「おう。保健室行くぞ。」 体を支えてやるとふらつきながらも立ち上がる。いくらか痩せたその腰に腕を回し、保健室へと進む。 保健医はかなりの変わり者で保健室にいないことが多く、がらりと扉を開けた今日も例に漏れずいなかった。 「ちょっと寝とけ。冷やすもん持ってくるわ。」 顔を殴られたのだろう、政宗の頬は赤くなっていて口元は切れていた。冷凍庫から保冷剤を取り出し、清潔なタオルを巻いて頬に当ててやるとthanks、と呟いた。 「もう、止めときゃいいんじゃねぇか?」 俺が口を出すのは珍しいことだったが政宗は別段驚いた様子もなく、ただ陰りを帯びた顔をしただけだった。 「自分でも分かってるんだ。あいつが俺に言った好き、なんてただの暇つぶしで、あいつは普通に女が好きで、今日だって女子に告白されてて…」 政宗の血に濡れた右手に消毒液をかけながら、ちらりと様子を窺うと今にも泣き出しそうな、悔しそうな顔を、していた。 「それでも…おれは…」 右手の傷はまだ塞がっておらず、じわじわと血が滲んでいた。 「愛が欲しいんだ…」 次の日佐助を殴った。 佐助とはなかなか気が合ったし、嫌いではなかった。でもこいつはやってはいけないことを、やったのだ。 「いってー」 殴り返されたせいでやはり口元が少し切れていて、さすりながら教室に鞄を取りに行き、がらりと扉を開ける。 すっかり暗くなった教室に、待っていたのだろうか、政宗がいた。 「…元親…」 「…おう。」 「おまえ…馬鹿じゃねぇの…」 俺の怪我と同じ位置に絆創膏を貼った政宗が顔を歪めてそう言った。 「馬鹿はお前だろ、」 そう言ってきゅ、と抱きしめればその歪んだ顔がさらにぐしゃっとなって、ぼろぼろと涙をこぼしだした。 「愛が欲しいわりに、気付くの遅ぇよバーカ。」 政宗の腕が背中に回って、うるせーという声だけ辛うじて聞こえてきた。どうやら抵抗はされないようだ。 俺はもう愛を求めて泣くことが無いようになればいいと同じところに怪我をしたその唇に自分の唇を押しつけた。 あとがき 男前な元親がかきたくなったんです。そして佐助ごめん…うちの佐助はいつも政宗に優しいので本気で気持ち悪いと思ってる佐助が書いてみたかったのでした。 お付き合い下さりありがとうございました! |