暑い夏の日。 ちょっとした用事で、小十郎が2、3日程城を空けることになった。つまり、小十郎が政宗の傍を離れることになったわけだ。 (土産は何が喜ばれるか…) そんなことを考えつつ、身支度を整える。政宗にやらせなくてはいけない政務の準備もすでに終わらせていた。 畑に行って収穫できる物は穫っておかなければならない、そう思い畑に向かおうとしたところでばたばたと侍女がやってきた。 「片倉様、政宗様が─」 「政宗様!!」 断りもなく襖を開けると、布団にだらしなく寝転がった政宗がYa、とだけ言った。 「…先程侍女から政宗様のお体の具合が優れないとお聞きしたのですが。」 「yes!優れねぇ!!」 政宗は小十郎の問いにうつ伏せになったまま足だけを振って答えた。 「……小十郎は疲れておるのでしょうか?政宗様は非常に元気そうに見えるのですが?」 「I'm not fine.暑いんだ、小十郎。」 「今は夏、暑いのは当然です。それなのに一国の主ともあろうお方がそのような弱音を吐かれますと、民に示しがききません。」 「そうは言ってもな。食欲もなくて。夏バテしそうだ。」 「だからあれほどしっかりお召し上がり下さいと!!」 小十郎がそう言うと政宗は上半身を持ち上げ、にやりと笑う。 「そうだな、お前が毎日そう言ってくれたおかげで俺は夏バテせずにすんでるわけだ。」 「はぁ。」 「つまりだ。」 政宗の日に焼けない白い指が小十郎の頬を撫でた。 「お前が城を空けてる間に、一国の主がバテて倒れちまうかもしれねぇぜ?」 「……困ったお方だ。」 元はと言えば政宗が命じたこと、ということには触れず、小十郎はその愛しい主人の我儘を甘んじて受け入れるのだった。 あとがき 小十政好きなのになかなか自分では書けません。政宗様の我儘を理解できる片倉様がいいなぁと。 お付き合いいただきありがとうございました!! |