俺の席は教室の一番後ろの端っこ。窓側。鞄に筆箱だけ入れて、帰る準備は万端。 教室の出入り口には女子がわんさかと。その中に一人、派手な頭の色した男。指定のネクタイはしてなくて、だらしなく開いた胸元からはセンスの良いTシャツが覗いている。 「この味おいしいの!!」 「新作?」 「そ〜!!はい、佐助君にもあげるね。」 「いいの〜?」 「あ、佐助君、私もあげる!!」 「え、ずるい!!私今度クッキー作ってくるからっ!!」 「あはは、期待しちゃうよ?」 そんなやりとりを横目でちらり。女はsweetsが好きだな、なんて思いながら鞄を肩に掛けて席を立った。普通に立ったつもりだったのに意外にもがちゃん、と音がした。 集団の間をかき分けるのが面倒で、わざわざ対角線上の扉へ向かう。 「伊達ちゃん!」 声の方向を見れば、まぁ声でわかってたけど、オレンジの馬鹿。 「俺様も帰るしちょっと待って?」 にこり、笑って女子の間をかき分ける。女子たちは呆然としてたり呼び止めたり。別に、帰る約束なんてしてないし。 佐助の声を聞こえないふりして扉をスライド。後ろから声が聞こえるけど、それも無視。 校庭を出て暫くしたら再び呼びかけられる。 「だーてーちゃーん」 「…」 「ねぇー」 踵を踏んで歩いているからかぱこぱこと耳障りな音が響く。うるせぇ。 「ねぇってばぁ!!」 「うるせぇ。」 「じゃぁ待ってよ〜」 「足。靴ぐれぇちゃんと履け。」 文句言ってやろうと後ろを振り向くと、棒付きのcandyを口に突っ込んだ佐助がニヒルな笑みを浮かべてた。 「…なんだよ。」 「ヤキモチ、妬いちゃった?」 すっと距離を詰められる。学校から多少離れたとはいえ、下校時。人は通る。 「妬いてねぇ。」 「うそ。伊達ちゃんずっとこっち見てた。」 「お前悪趣味。こっち見てんなよ。」 「見るでしょ、好きな子なら!!」 「Ha、好きな子ほっとくとか尚更質悪ぃぜ。」 「あ、ほらやっぱ焼いたんだぁ!!」 舐めてたcandyの棒を摘み、得意げに言う。あぁまじムカつくんですけど。 「うるせぇ。お菓子でも何でも勝手に期待しとけ。」 「へ?」 佐助は目をぱちり。俺、そんな反応予想してなかったんだけど。 「あーもぉかわいいなぁ」 「嬉しくねぇ。」 佐助がにやにやしながら近づいてくる。なんかムカつく。顔を逸らしたら、ずい、とcandyが目の前に出された。 「Ah?」 「はい、あげる。」 「いらねッ」 口を開けた瞬間否応なしに突っ込まれた。口に広がる甘い、いちごミルク味。 「間接べろちゅー」 「…お前馬鹿だろ。」 candyをくわえたまま背を向ける。もう、俺は帰るんだ。 「心配しなくても、手作りは政宗のしか食べないよ。」 政宗、と呼ぶ声に、反応。我ながら単純だと呆れたら、佐助はいたって真面目な顔。 「なんだよ、それ。」 「だから安心してね。俺様を構成するのは、政宗だよ。」 気がついたら手をきゅ、と。まだ人通りがあることにちょっと抵抗があるけど。 なんだか今日はいい。今日だけはいい。 俺は口に出す代わりに、 生温かいcandyを口の中で舐めた。 あとがき 佐政で書けるだけの甘いものを書いた気がします 笑 なんか照れくさい話ですね。 佐助の棒つきcandyはいらねぇ!の「ら」 のときにつっこまれたのです。 お付き合いありがとうございました!!! |