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誰かが言い出した。

『あの眼帯取ってみよう。』って。





上手く生きていく方法。
付き合いは広く浅く。愛想は良く。面倒なことには関わらない。傍観は平穏。これは俺の生きてく上でのルール。


入学当初から目に付く存在ではあった。眼帯してるのもあったけど、何よりその容姿が原因。第一ボタンを開けてゆるりと絞められたネクタイ。制服のカッターからはその白い鎖骨を覗かせる。薄い体に天鵞絨色の髪。何より鋭いその片目に目を奪われた。

最初こそ近づこうとした周りも彼の反応に距離を置き、挙げ句「目が気に入らねぇ」だかなんだかの理由で、いじめ、なんて愚かな行為は始まってしまう。いじめられる側にも原因がある、なんて言葉は只の詭弁でしかない。

はじめは無視。これはまぁ、相手も無視しっぱなしな訳だから効果なんてなくて。次に嫌がらせ。机に花置いてみたり、教科書をゴミ箱に突っ込んでみたり。それでも彼はあっさり机の花を教壇に置いて、埃にまみれた教科書を神経質に拭いた。

彼にとって孤独とは苦痛ではないのだと、無駄なことなのだと、何故気づかないのだろう。低レベルな奴らと当事者についてクラスメイトに話を合わせてヘラヘラ笑っているところで冒頭の眼帯云々の会話が聞こえてきた。

どのクラスにもいるようなクラスの中心的存在達。こいつらが右と言えば右、左と言えば左。ある意味楽な関係図で、俺の様に没個性してたいやつには有り難い存在なのだ。
そんな有り難い存在がにやにやとふざけた笑みを張り付けながら獲物を囲った。

本を読んでいた伊達はその不穏な影に気付き一瞥したが、くだらねぇ、という顔で再び本に視線を戻す。

あーそういうの、気に入らないんだってぇ、と心の中で伊達に忠告したのと同時に馬鹿二人がぐいっ、と伊達の腕を掴んだ。

今までのいじめの過程は暴力行為にまで至らなかったためか、伊達は一瞬、ほんの一瞬だけ驚いたような目をしたけど、あとは再びいつものよう。興味ない、勝手にやっとけ、そんな顔してた。

「なんだその目はぁ!」ってリーダー格の馬鹿が馬鹿な台詞吐いて伊達の薄っぺらなお腹を殴った。きゃーという女子の悲鳴はどことなく可愛く見せようてしているなぁ、なんて考えた。

少しは痛かったのか、眉を寄せた伊達に馬鹿が問う。

「お前何様のつもり?」

これにはさすがの俺様も噴きそうだった。何様ってお前こそ!!心の中で盛大に突っ込みを入れていたら問いかけられた本人も、俺同様おかしかったのかニィ、と口角をあげて馬鹿にするように笑った。

そう。こいつらは馬鹿なんだ。
馬鹿なんだから、放っておけばよかった。




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