小説 | ナノ
正しい二人乗りの仕方。



朝9時、俺は恐怖と戦っている。


「っ!!おい、政宗危ねぇだろうがっ!!」

「う、うるせっ」

「強がってないで代われよ!!」

「誰が代わるかッ!!」


学校までの道のりを2ケツ。8時半からHRが始まる。だから俺は毎日10分前に猛ダッシュでチャリを漕ぐ。後ろに政宗を乗せて。

だが。


「伊達ちゃんっていっつも親ちゃんに走らせて、女王様?」

佐助の一言がどう感情に触れたのか。今日は俺が漕ぐの一点張り。慣れてないのかぐらぐらするし、右に傾いてて偶に俺の右足を擦っていく。

「まーさーむーねーもう遅刻なんすけど。」

「う、うるせぇ!!道間違えたんだよ。」

「…言えよ。」

俺がこいつのハンドル操作に怯えている間に、道を間違えたらしい。確かにいつも俺が送ってるけど、自分の学校への道のりくらい覚えてるのが普通だろ。
しかも、慣れない運転(その上俺を荷台に乗せている)でかなり疲弊してる。


「政宗、」

「あ?」

「提案。」

「代わるのは無し。」

「しんどいくせに。今日はよぉ、このままさぼらねぇ?暑いし、アイスでも食おうぜ。」

「…お前の奢りだろうな?」

「なんでそうなる。」

「俺漕いだからな。」

毎日漕いでる俺はどうなる、と出かけた言葉を飲み込んで。ふっ、と耳に息をかけた。

「ぎゃあぁっ!!」

元々傾いていた右側にがしゃんと倒れた。

「てっめ、何しやがる!!危ねぇだろっ!!」

「悪い悪い。」

怪我はしてないはず。芝生を選んだし、政宗の綺麗な顔は俺の腕でガードしたし。

「で、政宗。」

がくがくと震える政宗の膝と腕を見ながら尋ねる。

「まだ漕ぐか?」

そう聞くと、酷く悔しそうな顔。ぷい、と顔を反らされた。

「おーい」

「うるせぇバカ親。」

「なんだそれ。」

「俺だって、その…」

「あ?」

「た…たいと、う…とか。とか…そういう関係っつーか…」


鯛と鵜?いやいや、対等か。やべぇこいついちいち可愛い。


「そんなん気にする仲じゃねぇし、俺はお前乗せて走るのが好きなの。」
俺のモンです。って宣伝してるみたいで。

「じゃぁ…」


倒れたチャリを起こす。


「ん?」

「今日はやっぱお前が奢りな。」

「は?いや、いいけど今の流れおかしくないか?」

「おかしくねぇ。俺は毎日お前に漕がせてやってんだ。」

「…なんだそれ。」


あり得ない理論を展開されてもなんだか抱きしめたくなるこの可愛い恋人を今日も荷台に乗せて俺は走る。










↓あとがき

そしてアイスを奢る親ちゃん。
道に迷ったとかいう無茶設定は水に流して下さい。あーあれです。政宗様は常に誰かに送り迎えしてもらうので道知らないのです。…ってことでどうですか(聞くな

おつきあいありがとうございました!!



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