小説 | ナノ
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元親との出会いは大学だった。
サークルの新歓イベントで知り合ってから、学部は違えど仲良くなり、下宿してる元親の元へ俺が転がり込んだ。元親の優しさに惹かれるのに時間はかからず、意を決して好きだと伝えると元親はがりがりと頭を掻いて、俺から言うつもりだったのによ、と言ってとてつもなく優しいキスをした。

『俺たち今日から恋人だな!』

あのとき元親が笑ったのを、俺は少しも色褪せることなく覚えている。

元親とはそれなりにうまくやっていたと思う。男同士のくせに記念日とか気にしてみたりして、お揃いのペアリングも買ってもらった。幸せを疑うことなんて一度もなかった。

あの日は、なんの前触れもなく、突然やってきた。いや、もしかしたら俺が気付かなかっただけで元親にはもっと前からなんらしか変化があったのかもしれない。今の関係は、元親の本性に気付いてやれなかった俺への罰なのかもしれない。

「いいか、今日から俺は、お前のご主人様だ」

感情の波など一切無い、単調な言葉だった。俺は言われた言葉の意味を理解しようとするも、何一つ頭に入ってこず、只ぼんやりと濁った瞳をした元親を見ていた。

「なぁ政宗、お前にいいもん買ってきたんだ。」

小さな箱から取り出された、紫色の首輪。俺は先ほどの言葉をようやく理解しつつあった。条件反射的に体が跳ね、緊張からか声も出ず、兎に角この場から逃れようと元親に背を向けた瞬間、大きな掌に腕を捕まれた。

「おいおい、どこいくんだ。」
「ち、か、」
「なんだよそんな怯えて。ほら、綺麗だろ?バイト代貯めてオーダーメイドで作ってもらったんだぜ。」

腕を捕まれたまま首に首輪があてがわれる。このままじゃ、何かが駄目になると頭の奥で警鐘が鳴った。俺は無我夢中で暴れ元親の腕を振り払った。

「元親!テメェなんの真似だ!そんな悪趣味なもんまで買いやがって、いい加減にっ」

勢いよくまくし立てた言葉は、しかし元親のたった一発の拳で止まる。殴られた所為で口内には血の味が広がった。

「政宗、言ったよな?俺はお前のご主人様だって、」
「う、だ、って」
「いや、いい。そうだよな、まだ躾も何もしてなかったな。」

元親が愛おしそうに目を細めた。それはまるで今までの一連の出来事が質の悪い白昼夢と勘違いしてしまうくらい優しいものだった。






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