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「それがまさか、雪男だったなんて。」
「あ?」

率直に言おう。政宗は、雪男だ。ふざけてるわけじゃない。俺だって最初そう言われたときはやばいの捕まえちゃったかな、と思ったくらいだ。でも実際彼はシャツ一でも全く寒がらなかったし、少し暖かくなってきた今日この頃においては、数時間おきに今みたいに氷水に浸からなくては体調が優れないらしい。

「雪男ってもっとけむくじゃらなんだと思ってた。裸でさ。」
「けむくじゃらじゃねぇけど裸は裸だったと思うぜ。」

政宗は自分が雪男であるという記憶以外あやふやらしく、気が付いたら住宅街にいて、慌てて干されてるシャツを拝借したそうだ。政宗曰く雪男は、冬になったら人間界にやってきて雪を降らせ、春になる頃帰っていくらしい。人間界にいる間は人に混じって生活するから、人間の文化や言語は熟知しているそうだ。

「もう春なのにね。」
「そうだな。」

帰り方がわからない雪男。暑くなったらどうなるのかと訊ねれば、『暑い』ということを経験したことも聞いたこともないから分からないという。

「雪も、こんだけ暖かいとさすがに降らせられねぇし、やっぱ俺溶けるのかもな。」

氷水に浸りながら、ぽつりと呟いた。どこか遠くに視線を投げやる彼の肌は確かに雪のように真っ白で、夏を過ごす彼の姿など少しも想像できない。でも。

「溶けないでよ。」

クローゼットで眠っていた服を折っては広げ、折っては広げ。彼の顔を見ずに言った。

「君は俺の理想で、思い描いていた通りで…政宗と出会ってから服のデザインが尽きない。沢山、着て欲しいものがあるんだよ。」

俺の、傍にいてよ。

政宗は勢いで口走ってしまった言葉を聞くと、ぼうっと何かを考えた後、少し顔を赤らめて、それってプロポーズってやつか?と言った。

「そう思ってくれんの?」
「そう思っていいのかよ。」

ばら色に染まった頬にキスをする。雪にキスをしているように冷たいのに、死体に触れたときとは違う、温かさを感じた。

「おまえを溶かしはしないよ。」

寒いくらいのロマンティックなプロポーズが、果たして雪男に有効なのかはわからないけれど、この狭い浴室で俺と政宗は夏を迎えることになりそうだ。







▼氷水に浸る伊達が書きたかっただけという俺得話。設定があまり意味をなしてないけれど、雪男の維持費はすごくお金がかかるけど佐助にとってはそんなのぜんぜん気にならないくらい伊達が必要なんだよって話でした。

お付き合いくださりありがとうございました!!



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