小説 | ナノ
狂った果実



▼セーラー伊達



「はい、じゃぁ出席とるから返事して下さい。」

教師になった理由とか、そんなのあんまりなくて。将来を考えるのが面倒で、なんとなく教職とって、なんとなく試験受けたら通っちゃったりなんかして。高校教師はわりと楽だ。生徒はほとんど大人のようなものだし、いちいち言わなくたって大概のことは自分で出来る。授業参観に来る親だってほとんどいない。

『全員体調不良の為保健室いきまーす』

全員体調が悪ければ、一人も漏れることなく保健室にだっていける。担任に心配かけまいと黒板にメッセージを残すことだって忘れない。

「せんせ、俺の名前呼んでない。」

出席名簿を閉じたところでそう告げられる。一番はじっこの後ろの席。にやんと笑った彼の名前は、この出席簿には無い。

「お前はこのクラスじゃないでしょう。」
「いいじゃねぇか名前呼ぶくらい。」

口を尖らせて、教卓までやってきた彼。揺れるスカートはやはり短い。前に屈めばきっと後ろから下着が見える筈だ。てゆうか実際に見たことがある(ちなみにそれは、彼が今日は後ろからして欲しいと言って壁に手を突いたときに見たからであって、つまり俺と彼は所謂そういう関係だ。)

「なぁなぁせんせ、視聴覚室での授業ってないの?」
「ないよ。あったとしても俺はお前のクラスの受け持ちじゃないんだから。」
「つれねぇなぁ、」

出席簿を彼の長い指がめくる。彼が普通に男子制服を着ていたら一体どれだけの女子が彼を好きになったろう。ラブレターなんて、今時あるのか知らないけど、そういう類のものを沢山貰うんだろうな。

「てゆうかなんで視聴覚室?」
「いや、俺さ、あれやりたいんだよ。」
「あれ?」

ちょんちょんとリップで潤いを与えられた唇を指す。

「スクリーンに写ったせんせの影と、kiss!」
「あぁ、」

いつかの鬱ドラマでやってたあれかとようやく理解する。頭のおかしい彼のやりたがりそうなことだと思う。

「やだよ面倒くさい。」
「なんでだよーせっかくの高校教師じゃねぇか!」

せっかくの意味がさっぱり理解できないけれど。しかしまぁ、確かにあのシーンはなかなかよかった。いや、すごく憧れます正直なところ。

「なーだから今から行こうぜ!」
「だーめ。今は授業中ですぅ。」
「誰もいないじゃねぇかよ。」
「政宗がいるでしょ。」

途端に染まる頬。たまにこういう無垢な反応をしてくるからいけない。俺は艶やかな髪に手を差し込み顔を寄せた。

「今はこっちで勘弁ね。」





▼タイトルを僕たちの失敗にするかとても悩みましたがそれはまた別の機会にと思い、こちらにしました。
スクリーンとキスはいつか書きたいです。
お付き合いくださりありがとうございました!



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