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ぼくらの×日間戦争



▼佐助がキャラ崩壊。


普段は飄々としてなんでもそつなく熟す友人の変わり果てた姿に俺は差し入れとして持ってきたまつ姉ちゃんお手製の弁当をつるっと落としそうになった。

「うう…政宗……俺の天使…」

ぼそぼそとそんなことを言いながらパソコンに向かう佐助の周りにはたくさんのマグカップ。見たことない名前が書いてあるものもあるから他人のマグにまで手を出してるらしい。コーヒーの飲み過ぎは胃によくないんだって!

「佐助!久々じゃん!」
「ん……?」

声をかけにくい雰囲気をどうにか破って研究室に踏み入る。近づけば佐助の目の下の隈がはっきり認識出来てしまいなんだか可哀想だ。

「なんだ慶ちゃんか、」

前言撤回。

「なんだって酷いなぁ!佐助がおかしいって幸村から聞いたから様子見に来てやったのに。」
「幸村…あぁ、あの悪魔ね。」
「あ、悪魔ぁ?」

佐助からの思わぬ一言に俺は再び弁当を落としかける。幸村といえば佐助にとって息子のような、生き甲斐のような、恋人とはまた違うけどものすごく愛を注いでいるイメージだったんだけど。

「そう…悪魔だよ。でもそんな風に育てたのは俺様なんだよね。よし決めた。旦那を殺して俺も死ぬ。」

分厚い本を閉じて佐助がイスから立ち上がる。うわー目が完全にやばい。幸村ったら何したんだよ。

「ちょ、佐助!どこ行くの、」
「だから旦那を殺して俺も死ぬの。」
「駄目だって!わー」
「Stop!」

俺の体をぐいぐい押しながら進んでいた佐助を止めたのは、たったの一言。

「あ…、」
「なぁにふぬけた顔してんだよ。」
「まさむねえ!!!」

俺を押し退け入り口に立つ彼の恋人、政宗に飛びつく姿は普段からは想像も出来ないくらい、なんていうか哀れだ。

「わー来てくれるって信じてたよ政宗大好き助けてえええ」
「落ち着けって。」

嘆く佐助を席に座らせて、弁当を食べさせながら(二日ぶりのまともな食事らしい)話を聞くと、どうやら後輩の真田幸村のレポートに付き合った所為で自分のレポートの提出期限がぎりぎりに迫ってしまったらしかった。その上発表の場には教授より厳しいことで有名な毛利先輩まで居合わせるらしく、さすがの佐助も精神がぶれぶれらしい。

「兎に角、政宗には俺の傍で英語の文献を訳して欲しいのね。俺の傍でね。」
「しゃぁねぇなぁ。」
「じゃぁ俺は?」
「慶ちゃんはね、研究室で寝こけてる親ちゃん呼んできてもらえる?ゆっくりでいいよ。」

にこっと笑った佐助の顔。ゆっくりでいいというのはつまり、当分帰ってくるなってことだろう。極限状態に追いつめられた佐助を癒せるのは確かに政宗だけなのかもしれない。

「はいよ〜」

研究室の扉を閉めた途端、あんとかやんとか悩ましげな友人の声が聞こえた気がするけど俺は持ち前の明るさで一瞬で気を持ち直し、取り敢えず避難させてもらう為に元親のいる工学部棟に向かった。





▼学パロというより院生パロディ。
ただの俺得。CP要素薄くてすみません。
お付き合いくださりありがとうございました!



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