｢せんせぇ、つきあって。｣ 学校のマドンナだとかなんとか。最近の高校生とは凄いもので、足は細長いのにわりと胸はあったりして発育が良いというのか、いつどのあたりで遺伝子に変化が起きたのだろうかと疑問に思うくらい、つまりかわいいのだ。 ｢せんせぇって他のせんせぇと違ってすっごい生徒のこと考えてくれてるっていうか、｣ パーマなのか巻いてるのかくるくるの毛先に着崩したブレザー。カーディガンがなければブラが見えてるんじゃないかと思うくらい開けられたカッターは学校指定のものじゃないようだ。 ｢ねぇせんせぇ｣ ぎらぎらのグロスが塗りたくられた半開きの唇からは呆れるくらい間抜けな発音が聞こえる。せんせぇじゃない、先生だろとどうしてこの学校の教師は教えてやらないんだろう。と考えてその一教師が自分であることに気が付いてただただ面倒くさくなった。 ｢そんなねぇ、君らのこと考えてるのは俺だけじゃないって。島津先生も上杉先生も武田先生も(毛利先生は考えてないよなぁ)熱心な教育者だよ。｣ なんなら俺は正直今名前を挙げた先生方のように君ら生徒のことを真剣に考えたことがあるわけでもない。元々強い意志で教師になったわけでもないし、せいぜいコネクションで入った学校だから身内に迷惑掛けない程度に教師やろうって程度の思いで君ら生徒に構っているんだよ。と、まぁそんなことが言えるわけもないんだけど。 ｢せんせぇ信じてないでしょ。私本気だよ？｣ 目の前の生徒の手がゆるりとカーディガンにかかり、ボタンを外していく。黒いレースがちらりと覗いた。 ｢おまえね、大人をからかうもんじゃないよ。｣ ｢からかってないよ。｣ あーもう面倒くさい。一人でストリップショーを始めたこの学校のマドンナをどう対処しようか、もうこの際折角なので楽しませていただこうかしらなんて思ってたら閉まっていた筈の扉が勢いよく開いて、セーラー服がひょっこり現れた。 ｢先生、質問なんだけど？｣ その声を聞いた瞬間マドンナは素早くカーディガンを身にまとい瞬く間に教室から出ていってしまった。 ｢伊達、｣ ｢政宗。助けてやっただろ？｣ ｢鍵はどうしたの。｣ ｢こないだ合い鍵作った。いいだろ、数学準備室なんてどうせ先生しか使わないし。｣ 長めの髪に白い眼帯。白いラインのセーラー服に、今日は紺のソックスらしい。うちの制服はブレザーだったと記憶してるんですが。 ｢ほんと俺ってば問題児ばかりに好かれるのね。｣ ｢俺の場合は相思相愛だろ？｣ ｢かわいくないなー｣ ｢かわいがってるくせに。｣ そう言ってにやりと笑うと伊達は扉を閉めて、軽い足取りで俺に抱きついた。 嗚呼…!! 嗚呼もうかわいい!そうなんです。俺はこの学校一かわいかろうが唇がグロスでてろてろであろうがブラが黒であろうがなんであろうが、このセーラー服をお召しになったこの青年を全身全霊で愛しているんです。 ｢あーもうやっぱり政宗がかわいい。最高!俺の癒し!天使かなんか？｣ そう訊ねてそんなわけあるかよ、と笑い合う。これがさっきの彼女とならまぁ鳥肌立つくらい気持ち悪いのだろうけど政宗となら気持ち悪いどころか良い夢が見れそうなくらい素敵に思えるから不思議だよね。 ｢で、次俺授業ないんだけどさ。｣ ｢教育者がサボれって言うのか？｣ くつくつと笑う政宗の腰に下半身を押しつける。変態みたいだと罵られそうだけど政宗はわりと学校でやらしいことをするのが好きだ。勿論最後までやらずにご奉仕だけってのもよくあることだ。 ｢今日は駄目。｣ ｢は…？｣ 妄想を膨らましていた俺に降りかかった冷たい一言に思わず呆然とする。 ｢今日は駄目だって。｣ ｢え、なんで、｣ ぽかんとしながら訊ねた俺に政宗は意地悪く口角を上げ、俺の唇を真っ赤な舌で舐めると、かわいらしく抱きしめていた腕を放し、小さく手を振った。 ｢佐助さっきあの女とどうせだったら流れに身を任せようって思ったろ。｣ ｢え…｣ やばい。目が泳ぐ。てか、どこから見ていらしたのかしら政宗さんたら。 ｢いや、そんなこと…｣ ｢嘘吐いたら一週間お触り厳禁。｣ にこやかに笑って扉へ向かう政宗を俺は黙って見つめるしかできない。こんな恐ろしい状況でも揺れるプリーツスカートから覗く白い足がいいなぁなんて思う俺はどうしようもないかもしれない。 ｢ちょっと反省しろよ、じゃぁな!｣ ばたんと閉められた扉に溜息を吐く。今この場で事に及べ無かったことはかなり悔しい。しかしそれ以上に嫉妬された事実に対して俺は予想以上に興奮してしまったらしい。 ｢はー虚しいなぁ。政宗にして欲しかったな。｣ 教師らしからぬ願いを口にして熱が冷めるのを待った。 ▼なにこの佐助きもちわるいっ! こんなつもりじゃなかったけど変態佐助が書けて満足でした。ふたりきりになると伊達呼び教師面から政宗呼び変態に変わるのもなかなかいいかなと思いました。 趣味満載に付き合って下さりありがとうございました! |