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佐助は自分の実力を認めた真田や武田に深く感謝していたしまた二人を人間としても軍人としても尊敬していた。
故に実力無くして軍の上層部に当然の如く蔓延る軍家の生まれの者を見下し、嫌煙するようになっていった。


そして冒頭に戻るのだが佐助が入手した情報によると東軍の頂点である大佐の伊達輝宗が亡くなり、後任としてその息子政宗がその地位に就いたということだった。

「なんと。片倉殿が後任かと思っておったが。」

「旦那もそう思ってたよねぇ。」

資料を封筒に納めながら、すぐに正式な知らせがくると思うけど、と佐助は席を立ちお茶の用意をする。3年前と違い東西の軍は協定を結んでおり、実質的に二カ国間での戦争は今のところ無い状態となっていた。それでも軍は互いに高め合うかのように、監視や情報収集を怠ることは無かった。

「近々合同演習が行われるからそのときにでもお話ができるやもしれんな。政宗殿と。」

嬉々として云う幸村を一瞥して佐助は溜息を吐いた。

「旦那もしかして合同演習参加する気?」

「当然であろう。」

いつだってこの上司はこうなのだと佐助は呆れた顔をした。


「旦那は合同演習の開会式だけじゃ無くて演習にも参加する気なんでしょ。なら向こうさんと話は出来ないんじゃないの?普通演習は一般兵しか参加しないから士官クラスは皆会議室に移るし、挨拶ぐらいは出来てもゆっくりお話とはいかないんじゃないかな。」

ううむと眉を寄せる幸村に佐助は呆れながらもやはり素晴らしい人物だと思う。
自らが現場の雰囲気を知らなければならないという大佐からのお言葉を忠実に守り中佐でありながら一般兵達に混じって訓練しようとする姿勢や一応敵である相手方の大佐に対して邪心無くお会いしてみたいというその清らかな心にやはり惹かれるのであった。

「しかしあの東軍を納められるお方となれば…是非ともお会いしたいものだ。ううん。」

「ま、俺様は大将より片倉さんに会ってみたいね。」

何故餓鬼の下についたのか聞きたいという本音は伏せたまま云えば、幸村もそれもそうだと頭を縦に振った。



「どうせ貴族のぼんぼんの様に使えない奴だろうからさ。」

その呟きは主の耳に入ることなく消えた。





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