この痛みは酸性雨 | ナノ




「ただいま。」

「おかえり。」

ぎぃ、という耳障りな音を立てながら佐助が扉を開ければはにかんだ笑顔で政宗が迎える。時刻は午後八時を過ぎたところだ。

「ご飯、できてる。」

「うん、食べよう食べよう。」

本音を言えば先に風呂に入りたい佐助だが、これ以上政宗を待たせるのは可哀想だという思いからいつも食事を先にする。服を部屋着に着替えれば、ローテーブルには食事が並ぶ。


「今日もおいしそうだね。いただきます。」

「いただきます。」

コンソメ味のスープに新キャベツのロールキャベツ。ほうれん草とベーコンの卵綴じ。豆ご飯。普通の新婚さんに比べれば量は少ないかもしれないが、二人はこれを不満に思ったことはない。

「政宗の料理は本当においしいや。」

佐助の笑顔を見て、政宗の顔も笑顔になる。二人にはこれで十分でだった。

佐助のバイト先に変な髪型の客が現れたという話や、先日行った近所のコインランドリーの猫が猫がかわいかったなどという他愛もない会話を続けながら食事をしていると、ふと佐助が訊ねる。

「そういえば、さ。政宗なんか痩せたよね…?」

佐助の突然の疑問に政宗が答える。

「そうか?」

「いや、なんとなく、だけど。」

「そんな急に痩せねぇよ。」

確かにダイエットしているのならまだしも、ご飯も普通に食べている政宗がたった三週間で目に見えて痩せることなどないだろうと佐助もそれ以上の追求をやめ、再び帰り道に見たお洒落なカフェの話を始める。





















「じゃぁおやすみ。」

「おやすみ。」

一組の布団に向かい合って眠る。また明日も無事に迎えられるようにと、祈るように目を閉じた。



















佐助は気づかない。

佐助は一枚食べた朝食のトーストが政宗は半分だったこと。
政宗のロールキャベツが小さかったこと。ロールキャベツの中身は少量の肉がキャベツの芯でかさましされていたこと。豆ご飯が少なかったこと。

政宗がお昼ご飯を食べていないこと。









佐助は政宗との同棲を初めてから新しくバイトを始めたのでまだ新人扱いです。
前田は勿論慶次です。




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