この痛みは酸性雨 | ナノ






世界は、嗤うのかしら。


「お金、無いや。」

卒業式の日から、三週間。佐助はバイト先の休憩室で呟いた。

「やっぱりキツかったかなぁ。」

佐助と政宗の『けっこん』のきっかけは佐助の一人暮らしだった。父親の失踪、母の再婚により一人親戚の家で肩身狭く暮らしていた佐助は、高校卒業の数週間前親戚夫妻に呼ばれ、家を出るよう言われた。勿論かなりオブラートに包まれた言い方ではあったが早い話、敷金礼金その他引っ越しに必要な資金は出すのでそろそろ出ていってくれないか。というものだった。
佐助はこれを至極当たり前のことだと思った。考えてみれば、うっすらと血が繋がっているというそれだけの理由で今まで自分に衣食住与えてくれていたなんて、それ以上何も望むことなど無いのだ。本来なら敷金礼金等も断るべきなのだろうが学生の身の上それに充てる金など無かった佐助はそのお言葉に甘えることにして、深々と頭を下げ、卒業式の日に出ていくことを告げた。





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