この痛みは酸性雨 | ナノ
スカイブルーの深呼吸




朝食時は新聞よりも、ニュース。
あの日から一週間後の朝。
いつものアナウンサーの声が、
私の鼓膜を揺らした。



「はい、ここが俺と政宗の、あ い の す」

卒業式の会場から抜け出した佐助と政宗は、途中駅で佐助が持ってきていた服に着替えた後、ローカル線を乗り継ぎ乗り継ぎ、古びたアパートに来た。

「あいのす?」

「うん。愛、の巣、ね?」

古いかな、なんて笑う佐助に政宗も笑う。政宗はこういった単語等世間一般の基本的知識に対して非情に弱い部分があった為、学校のレベル、偏差値云々に関係なく佐助の言うことには一種の盲信的とも言える絶対の信頼を置いていた。

「狭くて汚いんだけどね。この辺りは静かだし、何より俺達みたいな子供が住むには有り難い家賃なんだよね。」

階段は、表面の塗装が剥げた上に錆びていて見た目も悪ければ手摺に触れても臭いが付いた。その階段を上りきり、短い廊下を歩く。

「ここ。」

佐助が指さした部屋の扉は隣の扉と左右逆になっているだけであるのに、政宗にはこのアパートのどの扉よりも輝いて見えた。佐助がキーケースから鍵を取り出して、ノブを回す。ぎぃ、という古びた音と共に、扉が開けられた。

「ここが、」

「そう。愛の巣、だよ。」


















ざらついたフローリングは六畳分。黄ばんだ窓は一つ。油汚れのこびり付いたキッチンには、火加減が調節できるのかも危ういガスコンロが乗っているだけだ。その向かいにある風呂とトイレは一応セパレートだが、部屋の構想上かなり狭くなっていた。

「やだった?」

一頻り見るのに五分とかからなかった部屋を二人で見終えて、不安げに佐助が訊ねる。

「いや、全然。」

そう?と未だ不安げな佐助のパーカーの裾を掴んで政宗は花が綻ぶように笑った。

「うれしい。」

ちっぽけな二人が暮らすには、
あまりにもお似合いなこの部屋。

佐助も政宗の笑顔につられてへにゃんといつもの、つまり政宗にしか見せない笑顔を見せて、ゆったりと政宗を抱きしめた。

「じゃぁこの部屋で暮らしていく、ルールを決めよう。」

「ああ。」

佐助は持っていた大きな鞄から、今朝着ていた制服を取り出し、その内ポケットにあったメモを取り出した。

「ルールはひとつだけ。」

「ん。」

「守って、くれる?」

するりと頬を撫でた佐助の手に、目を瞑ることで政宗は了承の意を示した。

「じゃぁ、


ルールはね、



















一人でこの部屋から出ないこと。」






















テレビ画面に映る、
行方不明の少年の写真に、
私はひどく見覚えがあったけど、
スカイブルーの空を見つめて、
深呼吸することで、
どうにか気付かないふりをした。






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