覚えているのは、ブチ、という無機質な、繋がりの消える音。 どこを歩いているのかも佐助にはわからなかった。お気に入りの音楽を聴くこともなく、ただポケットに入れた小さな箱だけを握りしめて歩いた。 (さよならって…言ってた?) いつしか空は暗くなり、肌寒い風が吹く。ぽつ、ぽつと音を立てながら雨が降り出したことにすら、佐助は気付かなかった。 (政宗、俺のこと…嫌いになった?) 次第に音を大きくして降り出した雨は、視界も足取りも悪くしていく。元から引き返したい気持ちで沢山だった佐助の歩くペースはさらに落ち、ずるずると足を引きずるように歩く。 (当然だよね…) 顔に滴る雨を拭おうと、ポケットに突っ込んでいた手を無意識に出す。 「あ…」 ぱしゃ、という水音と共にポケットに入っていた箱が雨でどろどろになった道へ落ちた。綺麗な箱に泥が飛ぶ。 それを見た途端佐助はすぐさま箱を持ち上げ中を確認する。きらりと光るそれに今の自分が剰りにも情けないことに気がつかされ、笑いが零れた。 「これ、渡さなきゃ…駄目なんだ。」 ぎゅ、と箱を握りしめ後ろを見据える。 知らない間に結構歩いてしまったようだと思いながら、しかしちゃんと知っている場所であることを確認して佐助は走り出す。 (政宗、俺はーーーーーー) その瞬間佐助は、 佐助が今まで体験したことのない 衝撃を全身で受けた。 「まさむね…?」 全身に痛みが走り、箱を掴んでいた筈の指先に感覚が無くなり、佐助の思考が途切れる瞬間、ふと初めて二人でアパートに入った日の光景が浮かんだ。 (はは…政宗、綺麗だ…) |