この痛みは酸性雨 | ナノ




「で、結局なんだったんだろうなーこの事件。」

食い入るように画面を見ていた佐助は前田が声を発するまでその存在に気づかなかったし、ニュースで読み上げられている内容についても一切耳に入っていなかった。

「え、」

「なんだよお前ニュース見てたんじゃないの?」

「あぁ、見てましたけど、」

気づけば休憩時間は残り十分を切っており、佐助は賞味期限があと二時間後に迫ったサンドウィッチを急いで口に放り込んだ。

「なんかさ、道ばたふらついてるとこ保護されたってのは聞いたんだけど、それ以外の情報はほとんど聞かないんだぜ。」

佐助達の駆け落ち劇は世間ではちょっとした事件として扱われているらしかった。それにも関わらず世間に晒される情報の少なさや佐助に捜査の手が届かないところをみると政宗の親が事件を揉み消しにかかっているようだった。確かに自分の息子が男と駆け落ちごっこをしていました、などと認めることは政宗の家柄的にあってはならないことで、佐助もまた余計な捜査等がない分本来胸を撫で下ろしているところである。
しかしサンドウィッチのゴミをゴミ箱に入れ、戻ります、と声をかけてから休憩室を出た佐助の心情はそうではなかった。

「こんな形で…終わらせられない」





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