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ベッドのスプリングが音を立てる。佐助はこの音が好きだった。

「あーエッチしてるんだなぁって思うんだよね。」
「はぁ?あっ、」

薄いシャツの上から丹念に舐めれば、赤みを増した乳首が透けて見える。佐助はそれを指先で引っ張るように摘まみ上げた。

「いった、」
「またまた。痛いのが好きなくせに。」

ほら、と言わんばかりに佐助が膝で政宗の股間をぐにぐに刺激すると、政宗の口からは小刻みに声が上がった。

「ほら、もう硬くなってる」
「いちいち、言うなよ、」

ふい、と背けた顔は真っ赤でかわいいなぁと思いながらも、佐助にはいつものように進める気はなかった。

「は、脱がせろ、よ」

ジーンズ越しに刺激を与え続ければ、睨むようにして政宗が言う。しかし佐助はゆるい笑みを浮かべるだけだ。

「脱がしてほしいなら、お兄ちゃんって呼んでよ。」
「ふざけん、っあん、」
「ほらー服汚れるよ?」

にやにやと笑う佐助に舌打ちをし、政宗が服を脱ごうとすると、その手をやんわりと掴まれる。

「脱いじゃ駄目。」

佐助が長年かけて刷り込んできた『逆らわせない』という効果は絶大で、政宗は唇を噛んで腕を止めた。

「そうそう、その調子で。ほら、お兄ちゃんって」

しかしそこはやはり抵抗があるのが、政宗は閉じた口を開かない。佐助はふぅ、とさして苦労もないような溜め息を吐き、服の上から性器を擦り付けた。

「あ、ばか、あっやぁ、」

切ない声を上げたかと思えば、ふるふると体を震わせる。ジーンズを脱がせれば、じっとりと湿り気を帯びた下着があった。

「あらら、汚しちゃったね」
「てめ、」

濡れた下着の上からつう、と性器をなぞればびくりと体が揺れる。やめろ、と訴えかけてくる目を楽しみながら佐助は政宗の下着を下げた。

「佐助、ちょ、」
「政宗が呼んでくれないなら一人でお兄ちゃんプレイするからいいです。」

そう言って片手で政宗の性器をやんわりと握り混むと、佐助はもう片方の手で政宗の腕を掴み、性器を握っている佐助の手に重ねさせた。

「やだ、なんで」
「なんでって、まーくんがオナニーって何って聞いてきたんでしょ。」

政宗はぽかんとしているが、佐助はいたって真面目な顔つきでゆっくりと政宗の手を握り混んだまま手をスライドさせる。

「あ、あっ」
「ほら、気持ち良い?こうやって、手動かすんだよ。」
「ひ、あ、さす、」

佐助の、子供に話しかけるような甘やかした声が政宗を耳から犯していく。握っているのは自分の手なのに、佐助によって思った通りに動かせないもどかしさで、政宗の腰が浮く。

「ふ、あん、あっ、佐助、足りな、」
「お兄ちゃんってちゃんと呼べない子はいかせてあげません。」

佐助がそう言った途端に遅くなる手の動き。今にも達してしまいそうなのに決定的な刺激がなくて、政宗は困惑する。

「佐助、」
「お兄ちゃん。」

それだけ言うと佐助は片手で政宗の手をまとめ、空いた手をそろりと後ろにまわした。政宗の体が強ばると同時に指先がつぷりと挿入された。

「あのね、一人でするときはあんまりここ触んないと思うけど、まーくんは人一倍えっちぃからここも教えてあげるねぇ。」

甘ったるい話し方に政宗の顔は火が出そうな程赤くなる。佐助はそれを見て満足そうに笑うと、少しずつ指を動かし解していく。

「ふ、ぁ」
「気持ち良いの?まーくんはやらしいねー」

たっぷり時間をかけて解されたそこは指を抜けばきゅう、と閉まる。

「佐助、はやくっ」
「んー?」

物足りなさに腰を動かしながらねだる政宗を見て普段なら間違いなく入れているであろう自分を抑えながら、佐助はおざなりになっていた政宗の性器を再び握りながら笑った。

「前も後ろもぐずぐず。」
「うるさ、はやくっ」
「はいはい。」

軽く返事をすると佐助は自身をぴたりとあてがい、ゆっくり挿入していく。政宗は浅く息を吐き、佐助の動きが止まったところでこれから訪れるであろう衝撃に耐えるよう目を瞑った。

「佐助?」

しかしいつものような激しい衝動は無く、不思議に思って閉じていた目を開ければ、含み笑いをした佐助と目が合った。

「な、んで、」
「何が?」
「動けよ。」
「やだ。動いて、前も触って欲しいなら、ちゃんと呼んでよ。」

『お兄ちゃん』って。
耳元で囁かれた為に体がずくんと疼く。羞恥心で繋いでいた理性が崩れるのが分かった。

「お兄ちゃん、動いてっ、」
「ふは、俺おっきくなっちゃった。」










「寄るな、変態。」
「ひどっ!」

あの後政宗は散々お兄ちゃんと呼ばされ(ときにはにぃに、おにいたんなどバリエーションも豊富)、その度元気になる佐助にいいようにされていた。

「呼ぶ度でかくしやがって。」
「そりゃでかくなるでしょうよ。」

佐助の軽口に、政宗は眉を寄せ、溜め息を吐いた。

「せっかくの誕生日なのに、おめでとうも言えなかったじゃねぇか。」

ぷい、と視線を逸らして政宗が子供のように不貞腐れる。言われるがままに『お兄ちゃん』と呼んでしまったことが恥ずかしいというのもあるが、政宗からするとちゃんと祝いの言葉をかけてやれないままに日が過ぎてしまったことが悔しくて仕方なかった。

「ばかだなぁ、」

汗で湿った髪を撫でると、佐助は笑った。

「そういうのは、気持ちでしょう。」
「でも…言いたかった。」

怒ったような悲しいような顔をする政宗に、佐助の嗜虐心が刺激される。

「ふふ、じゃぁ『お兄ちゃん、おめでとっ』って言ってもいいよ?」
「…死ね。」



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